日本語の直示授与動詞「やる/くれる」の歴史

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タイトル別名
  • The History of the Japanese Deictic Giving Verbs Yaru and Kureru
  • ニホンゴ ノ チョクジジュヨ ドウシ 「 ヤル/クレル 」 ノ レキシ

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抄録

現代共通語の「やる/くれる」は,「方向性」,ないしは,「視点」の制約を有する直示授与動詞である。一方,古代中央語では,「くれる」(古代語では下二「くる」)は,求心的方向への授与,非求心的(遠心的)方向への授与のどちらでも使われる非直示授与動詞であり,「やる」は,授与動詞ではなく,「おこす」と対立をなす非求心的な直示移送動詞であったことが知られている。本稿では,主に,「くれる」が求心的授与の方向に意味領域を縮小させ,受け手寄りの視点制約を成立させた要因・背景について考察を行う。 中世期に「やる」が移送用法との類比(アナロジー)により授与用法を確立させ,非求心的授与領域内で「くれる」と「やる」が競合するが,通常の授与場面では,待遇的に中立的な,または,「くれる」に比べ相対的に丁寧な,「やる」の選択意識が高まり,中世期(室町期)から近世期にかけて,「くれる」は,次第に非求心的授与の意味領域から追い出されていき,求心的な方向性の制約,ないしは,受け手寄りの視点制約を成立させたと考えられる。現代共通語では,「やる」が下位待遇的(卑語的)意味を帯びつつあることから,「あげる」の選択意識が高まっており,(非敬語的な)非求心的授与領域において,さらなる語の入れ替えが生じつつある。

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