淡水二枚貝を用いた水質浄化方法の検討Ⅱ(予報)

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抄録

日本全国の淡水域の池や湖沼の水質の悪化,透明度の低下が問題となっている。本研究では,生物学的な方法として二枚貝類の濾過摂食活動を利用した水質浄化法を確立するため,小型水槽を用いた室内実験(第1段階),大型水槽を用いた室内実験(第2段階),自然水域での野外実験(第3段階)の3段階を設定して基礎的な研究を行った。小型水槽を用いた室内実験では,低水温(10℃)及び高水温(30℃)条件でイシガイ目の在来4種の濾過能力を比較した結果,タテボシガイとヨコハマシジラガイの濾過効率が高いことが明らかとなった。以前に報告した室温条件での結果と比べると,高温条件下では濾過効率に差はみられなかったが,低水温条件下では濾過効率は減少した。大型水槽を用いた室内実験では,小型水槽を用いた実験と同様に室温条件下でイシガイ目の在来3種のうちタテボシガイとヨコハマシジラガイの濾過効率が高いことを追証した。甲府市の玉諸公園の池にタテボシガイを設置した野外実験では、ほぼ1年間の間に殻長,殻高,殻幅,湿重量はともに増加し,自然水域でも二枚貝類が透明度の低下を引き起こす懸濁粒子を濾過し,その栄養分を成長にあてていることが明らかになった。期間を通して一定の成長がみられるのではなく,夏季に成長が鈍化したが,これは濾過摂食で得たエネルギーを繁殖のために消費したことによると推測された。野外実験で用いたタテボシガイの核の16S リボソームRNA(16SrRNA)遺伝子の塩基配列を決定し,タテボシガイであることを遺伝学的にも確かめた。また,入手したタテボシガイに混在していた別の種類と思われる二枚貝類の塩基配列も決定し,系統関係を示した。これらの実験結果と二枚貝類の希少性や入手のしやすさを考慮し,現時点ではタテボシガイが水質浄化に最も適していると判断した。

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