インフォームド・コンセント再考 : 専門家システムと現実の再構築

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タイトル別名
  • Informed Consent Reconsidered : an Expert System and the Reconstruction of Realities
  • インフォームド コンセント サイコウ センモンカ システム ト ゲンジツ ノ サイコウチク

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抄録

インフォームド・コンセントをめぐる議論は生命倫理ないし医療倫理の発展において中心的役割を果たしてきた。現在では、医療や人体実験においてインフォームド・コンセントが必要であることが医療現場ではほぼ常識となっている。しかし、従来のインフオームド・コンセント肯定論は患者の自己決定権の保障という観点から基礎づけられてきた。けれども、この立場は実際の医療過誤裁判の中で「どのような存在が人格であるか」という議論に収斂しがちである。また、生医学研究者の側からは、研究の自由を守るための妥協として、とりあえずインフォームド・コンセントを得ているにすぎないということもありうる。このように、インフォームド・コンセントが直面している限界を克服するために、私は社会学者のギデンズのモダニティ論における「専門家システム」という概念から、新たなインフォームド・コンセント肯定論を構想する。医療というシステムは専門家システムであり、「アクセス・ポイント」である医師は、専門家システムに対する信頼を確保するためにインフォームド・コンセントを得なければならない。また、患者が「治癒のイメージ」を獲得し、現実を再構築し、自己アイデンティティを回復して病気の治療に専念できるようにするためにも、適切なインフォームド・コンセントは不可欠である。私はこの立論が倫理学をさらに発展させる契機となることを期待する。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 23-1 21-39, 2002

    大阪大学大学院人間科学研究科社会学・人間学・人類学研究室

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