医療化論の動向 : 逸脱行動の医療化から疾患概念の拡大へ

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タイトル別名
  • Shifting Trends in Medicalization Theory : From the Medicalization of Deviant Behavior to the Expansion of Medicalized Categories
  • イリョウカロン ノ ドウコウ イツダツ コウドウ ノ イリョウカ カラ シッカン ガイネン ノ カクダイ ヘ
  • 医療化論の動向 : 逸脱行動の医療化から疾患概念の拡大ヘ

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抄録

本稿では、医療社会学の主要な分析枠組みである「医療化」論の動向を概観する。古典的には、「逸脱行動の医療化」の文脈でADHD・同性愛・アルコール依存等の事例研究が蓄積されてきた。その分析的意義として、逸脱行動に対する介入主体が、家庭・学校・法・宗教などから医療へと移行する過程を明らかにした点が挙げられる。一方、管轄圏のラディカルな変化という切り口では説明できない現象がある。それが「疾患概念の拡大」である。診断閾値下の準疾患へも介入されるようになるような場合である。患者の増加には、リスク要因への曝露以外にも、製薬産業のマーケティングによって受診行動が促されるといった議論がある。病気休職による経済的損失の緩和といった政策的要請とも結びつきつつ、早期発見・早期治療を軸とした啓発活動が展開される中で、どのようにして疾患概念が拡大したのか、早期介入を正当化する根拠は何かといった点について、その実態調査がなされる必要がある。本稿の構成は次の通りである。まず第1節では、医療化論の概要を提示した。第2節では、医療化論の2つの潮流である「逸脱行動の医療化」と「疾患概念の拡大」に関して、海外の事例研究を参照しながら記述した。続く第3節では、先行研究の主要な論点である「診断基準」と「製薬産業」について概観し、最後に第4節では、日本国内における医療化の事例研究のレビューを行い、今後の展望を提示した。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 35 39-51, 2014-03-31

    大阪大学大学院人間科学研究科社会学・人間学・人類学研究室

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