三島由紀夫の戯曲における古代ギリシアと現代日本 : 『ニオベ』と『朱雀家の滅亡』

書誌事項

タイトル別名
  • Ancient Greece and Contemporary Japan in Mishima Yukio’s Theatre : Niobe and The Decline and Fall of The Suzaku
  • ミシマ ユキオ ノ ギキョク ニ オケル コダイ ギリシア ト ゲンダイ ニホン ニオベ ト スザクケ ノ メツボウ

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説明

本稿は『ニオベ』と『朱雀家の滅亡』に焦点を当て、三島由紀夫の戯曲における古代ギリシアの役割について考察する。1951年に『群像』に掲載された『ニオベ』はニオベの神話、1967年に『文藝』に掲載された『朱雀家の滅亡』はヘラクレスの神話に基づいているが、両方の作品の背景に第二次世界大戦、アメリカ軍の占領、戦後日本の社会変動などの歴史的な出来事がある。これらの戯曲では、三島は古代ギリシアの神話や悲劇からインスピレーションを受ける一方、戦後日本における政治的な変化、社会的な転換、伝統的な価値観と新しい価値観の差異などに注目している。本稿の目的は、描写される現実と、演劇の枠組みとして設定された古代ギリシア神話の関係を明らかにすることである。神話の枠組みを借用することによって、三島は現在と過去の差異を強調し、戦後日本の混沌とした現実に理想的な秩序を再現することを試みていると考えられる。この秩序の再創造からはT・S・エリオットが提起した<神話的方法>が連想されるので、本稿は三島によるギリシア神話の改作とモダニズム文学の<神話的方法>を比較しつつ論じる。

収録刊行物

  • 言語文化研究

    言語文化研究 41 163-179, 2015-03-31

    大阪大学大学院言語文化研究科

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