2・3根菜類における同化物質の転流・蓄積におよぼす環境要素の影響(II) : 物質の転流・蓄積と地温および気温との関係

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  • The effect of some environmental factors on the translocation and storage of carbohydrate in the sweet potato, potato and sugar beet (II) Relationships between the translocation of carbohydrate or radioisotopes and temperature gradient in the sweet potato

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抄録

The influence of temperature gradient on the translocation and storage of carbohydrate in the sweet potato plant was studied by means of chemical analysis and use of radioisotopes. The temperatures of the sweet potato plant is influenced by the temperature condition of the environment about the plant. When roots of a sweet potato plant were divided into two groups and each half was exposed to different temperatures ; (10°, 20℃), (20°, 30℃) and (30°, 40℃), carbohydrate content of two divided roots which were harvested at intervals of four hours in darkness overnight decreased from 6 p. m. to 2 a. m. and increased from 2 a. m., but these of leaves decreased during the night in all cases. When two divided roots of a sweet potato plant were exposed to different temperatures for 20 hours, the translocation and accumulation of P^32 were better at 30℃ than at 40℃, better at 30℃ than at 20℃, and better at 20℃ than at 10℃ root temperature respectively. The translocation and accumulation of sucrose-C14 from four expanded leaves to two divided roots were better at 30℃ than 40℃, better at 30℃ than at 20℃, and better at 20℃ than at 10℃ root temperature in darkness for 12 and 15 hours.

温度は濃度勾配とともに糖の転流を左右する重要な因子と考えられ研究されている.その研究法としては,前報で行なつたような植物体全体を同一温度に保つての研究のほかに,転流の通路にあたる葉柄および茎の温度を色々かえて物質の転流を調べる研究がある.後者の研究法を用いた中にも,第1報でのべたような,転流の適温に関する意見の相違がみとめられる.Curtis(1929)は,菜豆の対生葉をつかつてその一方の葉柄を冷却した実験を行なつている.その結果,夜間における葉身からの炭水化物の転流は1℃ と4°~6℃では止まるか,または,非常に減退することをみいだした.この転流を阻止する原因は,低温が師管を通つて溶質を運ぶ原形質流動をとめるに近い温度であるためとしている.また,Curtis and Herty(1936)12)は,対葉法を用いて,転流による乾物の消耗を測定し,葉柄を0.5℃および4.5℃ にした場合には葉身の乾物消費は非常に減退し,7℃ および11℃ では,17℃ および24℃よりも多くの乾物が消耗することを明らかにしている.Vernon and Aronoff(1952)は,大豆の一葉で同化させたC^14を含む同化物質の転流と茎の温度との関係を研究し,20分転流させた場合には,0℃においては12cm,30℃ においては28cm下方に転流することをみとめている.このような比較的温度の高い場合に葉からの転流がよいとの意見のほかに低温度の場合によいとの意見がある.Went and Hull(1949)は,トマトの根系の糖濃度測定に盗泌液を用い,転流の通路にあたる茎の温度を1℃から23℃まで6段階に調節し,葉にあたえたsucroseの転流速度および転流量を測定した結果,sucroseの転流は茎の温度の低いほど早く量も多くなると報告している.また,Hull(1952)は,トマトおよびビートを用いて,sucrose-C^14およびglucose-C^14の転流と茎および葉柄の温度との関係を研究している.トマトでは茎の温度を1℃ および20℃ として暗所で1および3時間転流させ,ビートでは葉柄の温度を3℃および20℃として暗所で7分および15分間転流させてradioautographsを作製し観察している.その結果,転流は温度の低い場合に増大するか,あるいは温度に無関係であるとのべている.以上の炭水化物転流の研究と同様に葉に与えた無機物の移動と温度との関係を調べたSwanson and Whitney(1953)の研究がある.菜豆の葉にP^32およびその他の放射性物質を与え,4時間移動させた時,それらの最適葉柄温度は30℃付近であり,5℃では著しく移動が抑えられるし,温度処理した葉柄部分の蓄積は40℃で最も多いことを明らかにしている.温度はまた,物質の転流方向にも関係すると考えられているが,西内(1948)は,溶質は高温の部分から低温の部分に移動しやすく,水分は同時に逆方向に移動しやすく,その移動は温度傾斜の大きいほど多く,かつ速やかであるとの仮説を立てている.そうして,甘藷の1本の根を部分的に冷却し塊根を生ぜしめた.上述の如く多くは葉からの転流を中心として植物体の部分温度との関係を調べた研究である.葉からの転流の適温に関しては,第1報において30℃前後であることを明らかにした.そこで本研究においては物質をうけとる根を中心として同一植物体での根の部分温度と転入・蓄積の関係を追究し,温度と転流方向との関係を考察した.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390853649767668224
  • NII論文ID
    110001706674
  • NII書誌ID
    AN0005519X
  • DOI
    10.15017/21611
  • HANDLE
    2324/21611
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
    • CiNii Articles

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