ルリオトシブミ属Euopsから新たに発見された胞子嚢と胞子の揺籃への伝搬方法(甲虫目:オトシブミ科)

書誌事項

タイトル別名
  • The Mycetangia and the Mode of the Fungus Transmission in the Weevil Genus Euops (Coleoptera: Attelabidae)
  • ルリオトシブミゾク Euops カラ アラタニ ハッケンサレタ ホウシ ノウ

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抄録

昆虫と菌類の相互関係については,様々な場合が今までに報告されており,菌糸または腐朽した材を幼虫の食物とする共生関係は多くの食材性昆虫から知られている.本論文は,オトシブミ科から初めて発見された胞子嚢mycetangiaと胞子の揺籃への接種の方法,その補完的な働きをすると思われる腹板腺と特殊な剛毛の形態及び揺籃巻き上げ後の雌のブラシがけ行動に関する新知見を報告するものである.ルリオトシブミ属Euopsはオトシブミ科,オトシブミ亜科(Attelabidae:Attelabinae)に含まれる一群である.オトシブミ亜科はオトシブミ族,アシナガオトシブミ族,およびルリオトシブミ族に大別されるが,本属は一属のみでルリオトシブミ族tribe Euopiniを構成している(Morimoto,1962).ルリオトシブミ属はインド洋をとりまく地域を中心に100以上が知られており(Voss,1930,1953),分布のほぼ北東限であるわが国には6種1亜種が知られている(Sawada and Morimoto,1985).ルリオトシブミ属の雌成虫は産卵に際してオトシブミ亜科の他の群と同様に所謂"揺籃"を作る.ルリオトシブミ属の揺籃製作行動は,Djukin(1915),河野(1926,1928,1977),Kono(1930),桝田(1932),野村(1950),平野(1959),および森本(1964)によって観察されており,オトシブミ亜科の他の群と比較されている.桝田はカシルリオトシブミの雌が裁断後葉片上をコースを変えながら周回し噛傷をつける事を報告しているが,この行動の意義についてはその後顧みられていない.また,ルリオトシブミ属の際立った形態的特徴の一つに雌の腹部剛毛列があり,Sharp(1889)はすでにこの構造をルリオトシブミ属の標徴の一つとしている.実際,筆者の知る限り,日本,韓国および台湾に産する10種1亜種をはじめ,フィリピン,マレー半島,ニューギニア産の種(一部未同定)において,この構造は全く安定的に保持されている.しかし,現在までのところ雌腹部剛毛列の詳しい形態や,その機能についての研究も皆無である.本文に入るに先立って,日頃から懇篤なる御指導をいただいている九州大学農学部昆虫学教室の平嶋義宏教授に厚く御礼申し上げる.また,本研究に対して御助言いただいた九州大学農学部植物病理学教室の松山宣明助教授,機材の使用を御許可いただいた九州大学農学部栽培学教室の武田友四郎教授に心から感謝する.さらに,同栽培学教室の上野修博士には組織学的手法に関して御指導いただいたので謝意を表す.

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