久住高原地域のフタトゲチマダニ防除に関する基礎的研究(1) : ダニの生態に関する予報

書誌事項

タイトル別名
  • Fundamental Studies on the Control of the Cattle Tick,Haemaphysalis longicornis,at Kuju Highland (1) : Preliminary Report on the Ecology of the Tick
  • キュウジュウ コウゲン チイキ ノ フタトゲチマダニ ボウジョ ニ カンスル

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説明

九州大学農学部付属高原農業実験実習場(久住高原)地域におけるフタトゲチマダニを主対象とした野外調査と室内実験,小噂乳類相とそれらの寄生ダニ,および鳥相の野外調査を行なった.1. フクトゲチマダニの生態1) 牧野(フランネル法)および牛体上から得られたダニはすべてフタトゲチマダニであった.O牧野における盛夏7月中旬の調査では,牧野から全発育段階(幼・若・成虫) のダニが得られた.一方,初秋9月下旬の調査では成ダニは全く採集されず,また未吸血若ダニも僅か得られたに過ぎないが,未吸血助ダニは著しく増加していた.2) O牧野で7月に採集した未吸血成ダニは雄22匹雌17匹からなっていたが,牛体から任意に採取した吸血成ダニ13匹は雌であった. 吸血雌成ダニの体重と総産卵数とは強い正の相関を示し,吸血畳の多いものほど産卵数は増加した. 吸血雌成ダニ体重1mg当たりの産卵数は平均10.9個で,高温(平均29.0℃)下のもので多い傾向を示した.雌成ダニは産卵後平均3日目に死亡した.3) 卵期は高温下のものはど著しく短縮され,孵化に要する積算温度と発育零点はそれぞれ平均357日度と10.7℃であった.異なる温度下(平均22.1℃,24.9℃,28.6℃)では卵発生に著しい遅速が見られたが,平均卿化率(81.1~82.9%)はほとんど一定していた.4) 耕化直後における幼ダニの平均体重は0.038mgで,約1週間後には活動的になった.5) 幼ダニの吸血期間は平均6日で,吸血幼ダニの体重は孵化時の約12倍(0・450mg)に増加した. その脱皮期間は平均25.1℃ 下で23日,28.2℃下で10日であった.2.小哺乳類相と寄生ダニ類1) 盛夏と初秋の2回にわたって捕獲した小噂乳類(鼠類3種と食虫類2種)から寄生ダニ16種が採取された.鼠類から得られた14種のうち9種がトゲダニ科に属するものであった・しかし,マダニ科のものとしてはヤマトマダニの吸血幼虫が認められただけで,フタトゲチマダニは採取されなかった.2) 寄生実験により,フタトゲチマダニの幼虫は低率ではあるがテンジクネズミとハタネズミに寄生して吸血し,若ダニになることが確認された.3. 鳥相と寄生ダニ類確認された31種の鳥類のうち数種を除けば,他は地上部を餌場とする種類であった.ダニ類は鳥類が主として地上部を利用する時に寄生すると考えられるので,本地域における鳥類へのダニ類の付着あるいは寄生に関する研究が今後必要と考えられた.

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