マダイ卵巣卵の成熟過程と産卵数

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タイトル別名
  • Fecundity and maturation process of ovarian eggs of sea bream, Pagrus major (Temminck et Schlegel)
  • マダイ ランソウラン ノ セイジュク カテイ ト サンランスウ

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抄録

この報告の目的は,マダイ卵巣卵の成熟過程と卵巣内卵数に関する基礎知識を求め,既往の飼育魚の産卵例と対比しつつ,産卵数との関係を検討することである.この調査に用いた材料は九州北部の筑前海域より1969年3月から1970年7月にかけて採集したものであり,主として卵巣卵の組織学的観察と卵数および卵径測定を行なつたものである.10%フォルマリン液で保存した卵巣標本を用いた.卵数および卵径測定は万能投影機を用い,50倍に拡大して行なつた.卵数算定は重量法で行ない,卵巣中の1部分の卵数を卵巣重量比で全卵数にひきのばした.卵巣の組織切片標本はパラフィン法もしくはセロイジン法により作製し,デラフィールド・ヘマトキシリンとエオシンの二重染色をほどこした.産卵盛期は年度により多少異なるが4月下旬から5月下旬にかけてである.卵径組成を求め,卵の発育について論議し,卵径組成が多峯型で多回産卵を行なうことを暗示した(Fig.1).各成熟期の卵巣および卵巣卵の一般的組織像についてはPl.1,2および3に示した.成熟魚の組織学的検査によれば,種々の成熟期にある卵や,新・旧の排卵痕がその卵巣中に同時にみられ,長期にわたつて多数回の産卵がなされることを示している.卵の成熟期,その卵径範囲,卵巣の卵径組成による型とその成熟期については,切片観察と卵径測定を基にしてTable 1にとりまとめた.卵巣型別にフォーク長と卵黄胞期以上に発育した卵の数との関係を求めた(Fig.2).北島の資料(未発表)を用いて養成魚と天然魚の卵巣内卵数のフォーク長に対する関係を,異なつた水域の材料で比較したが,差は認められなかつた.卵黄球期以上に発育した卵の数をフォーク長との関係において卵巣型別にプロットした(Fig.3).これらの全ての卵数はフォーク長の増大にともなつて増加する.養成魚の産卵期中の全産卵数(古賀ら,北島の資料)は,卵黄球期以上に発育した卵巣内卵数の約4倍,卵黄胞期以上のそれの約2倍である.この結果から毎日の産卵を行なうかたわら産卵期中は,常時未成熟期の卵団から成熟期の卵団へと,発育添加がなされていると推定した.養成魚の産卵数とそれと同じフォーク長の魚が有する卵巣内の分離成熟卵団の卵数を比較することによつて,マダイは1日のうちに1~4回排卵すると推定した.なお,それらの産卵はほとんど1回(多くて3回)でなされる.

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