モクズガニEriocheir japonica(de Haan)の生態と漁業実態に関するアンケート調査

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タイトル別名
  • Questionnaire Research on the Ecology and Fishery of the Japanese Mitten Crab Eriocheir Japonica (de Haan)
  • モクズガニ Eriocheir japonica de Haan ノ セイタイ

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抄録

主に各県の内水面水産試験場に対して,モクズガニEriocheir japonicaの生態と漁業実態に関するアンケート調査を1996年10月から11月にかけて行い,回答をまとめることでモクズガニの生態と漁業の現状を推察した.その結果,モクズガニは日本に広く分布するが,北海道南東部では分布しないか分布していても稀である可能性が明らかになり,長野などの内陸部でも,非常に稀であることが明らかになった.降河・繁殖時期はいずれも秋から春にかけての期間であり,秋か春のいずれかに偏りがみられるものがあった.漁期もほぼ降河・繁殖時期と一致していた.これらの時期に地域による違いは認められたが,緯度との関係など,一定の傾向は認められなかった.稚ガニの遡上もいくつかの場所で観察され,甲幅1cm前後の個体が春頃に河口から下流域で観察される例が多かった.フクロムシSacculina gregariaの寄生を受けたモクズガニは,富山でのみ確認できた.また多くの場所でモクズガニは食品として扱われ,漁獲対象となっており,一部では卸値でkgあたり2000円以上の高値で取り引きされる重要種でもあることが明らかになった.それとともに,資源の減少の危険性も各地で指摘されており,漁獲を行っている過半数の県で何らかの漁獲制限も行われ,種苗生産と放流事業も一部の県で行われていた.しかし,日本全体としては資源保護活動はまだ一部で実施されているのみなので,今後の進展が期待される.

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被引用文献 (11)*注記

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