<論説>アクティウムの海戦再考

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タイトル別名
  • <Articles>The Battle of Actium : A Reconsideration
  • アクティウムの海戦再考
  • アクティウム ノ カイセン サイコウ

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抄録

前三一年に、オクタウィアヌスがアントニウス・クレオパトラ連合軍を破り、ローマ世界の単独支配者となった戦いは、「アクティウムの海戦」として古来有名である。ところが、史料のほとんどが、勝利者側の主張しか伝えていないために、この事件の真相を解明することは非常に困難である。アクティウムを頂点とする両陣営の抗争は、従来は主にローマ帝国内部の権力闘争として把握され、オクタウィアヌスが宣戦を布告した相手が、アントニウスではなくてクレオパトラであったことも、「外征=正統な戦争」を標榜するための口実であるとされて来た。しかし、史料を再検討した結果、この戦争が本質的にもローマとアレクサンドリアの対立であり、当時の地中海世界におけるエジプトの卓越した経済力が、この事件の大きな要因の一つであったことが知られる。エジプトにおける、前二世紀以降の南海貿易の発達と、地中海方面の貿易の拡大にともなって、ローマとアレクサンドリアの貿易関係は、ローマ側の大幅な輸入超過となっていたのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 60 (5), 690-720, 1977-09-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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