<論説>八・九世紀伊勢神郡の再編成過程と領域性 : その歴史地理学的試論

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タイトル別名
  • <Articles>The Reorganization of the Ise shingun (伊勢神郡) : An Exploration of Territoriality in Eighth and Ninth Century Japan
  • 8・9世紀伊勢神郡の再編成過程と領域性--その歴史地理学的試論
  • 8 9セイキ イセ シングン ノ サイヘンセイ カテイ ト リョウイキセイ ソ

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抄録

いわゆる伊勢神宮の維持基盤のひとつである伊勢神郡の歴史的展開については、従来多くの研究が積み重ねられてきた。その中でも、八世紀末頃の神郡の変化は神郡の神域化としてとらえられ、時系列的な分析が行われている。この点に関して筆者は領域性という視座を導入することによって、より議論を深化することができると考えている。領域性とはR. D. Sack によれば「地理的範域に対して制限を加え制御を主張することによって人々・諸現象・諸関係に作用・影響を及ぼし、管理しようとする個人ないし集団の性質」であり、地理学においてはこのような視角に立った研究が近年盛んである。よってこのような研究動向を踏まえて、具体的な分析をおこなう。まず、神郡における人間の編成の問題を取り上げ、成立期においては様々な属性の人問が存在した可能性ないし一般民戸から成り立っていた可能性のある神郡が、八世紀中の或る時点までに神郡領域を単位とした分類に基づいて編成されるようになったとも考えられることを述べる。そして、これが神郡領域の領域性の性質に基づくものであることを指摘する。次に神堺という神郡領域を画する境界を取り上げ、神堺の実体、神堺をめぐる排除などを検討する。その結果を受けて、神堺に強く現れる規制の形成を具体的に把握する。さらに、それらを基礎として帰属意識の創出といった領域性の戦略的使用がなされた可能性を想定する。以上の分析を通じて、八・九世紀伊勢神郡の再編成過程における領域性という空間の論理が伊勢神郡という社会を形づけている有り様と伊勢神郡の社会の構造が空間を規定する有り様の連接を明らかにする。

収録刊行物

  • 史林

    史林 78 (1), 97-137, 1995-01-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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