<論説>木製楔の基礎的論考

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>A Comprehensive Survey of Wooden Wedges
  • 木製楔の基礎的論考
  • モクセイ クサビノ キソテキロンコウ

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説明

楔は一端を薄く尖らせた道具で、隙間に打ち込んで木を割ったり固定したりする機能をもつ。木器生産の製材工程に関わる工具でありながら、遺物としての認定が難しく、これまで主だった検討対象とならなかった。木材の利用法を具体的に解明するための手がかりとして、本稿は木製楔を題材とし、縄文時代から古代の資料を集成したのち三タイプに分類して時期ごとの様相を整理する。また楔で割り裂いた材の観察を行い、残された楔の痕跡をもとに製材技術を復原する。さらに樹種同定の結果を考慮して、楔の様相から背後にある木材資源との関連性を読み取っていく。材の樹種組成や用途に着目して、割材利用のあり方が特徴的な三遺跡の様相を整理し、それぞれ広葉樹分割材、同みかん割材、針葉樹を集中的に利用していたことを明らかにした。この三類型それぞれに、概ね三タイプの楔が対応することを示し、楔が木材利用に密接にかかわる道具であるとの位置づけを行った。さらに複数タイプの楔が併存する背景には、木材資源の複合的な利用があったとの結論を導いた。今後は、より包括的な木器生産論を展開するために、従来の未製品を主体とした検討とともに、原材の把握を通して木材の獲得工程から視野に入れ、木材利用論とも接点を持つ必要がある。

収録刊行物

  • 史林

    史林 85 (4), 468-507, 2002-07-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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