<論説>強訴考

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タイトル別名
  • <Articles>A Consideration of Goso 強訴
  • 強訴考
  • ゴウソコウ

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説明

中世寺院による強訴の実態は、悪僧による暴力的・暴発的な濫行ではなく、政治状況に柔軟に対応できるよう大衆に統御された訴訟行為であった。院政期の神人と大衆の訴訟の共同化によって、大衆は「神威」を取り込み、仏法秩序の社会的浸透を達成する。これに対して中世国家は、強訴においては大衆との直接対峙を回避しつつ、強訴への規制を緩和することで、寺院勢力を体制内部に組み込んだ王法―仏法秩序の貫徹を期待した。世俗社会は、寺院社会との日常的な情報交換の仕組みによって規範を共有しており、集団性・神秘性を帯びた同心を、そのまま<力>として受けとめていたから、大衆の「衆威」やその訴訟を同心に基づく「善」なるものとして、正当性を認めていた。王法―仏法秩序の浸透を志向する国家は、現実に問題となっていた寺院社会の「悪」を神人・悪僧問題として排除し、「善」なる大衆を中心とする権門寺院の体制化を推進した。

収録刊行物

  • 史林

    史林 85 (5), 603-636, 2002-09-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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