<論説>日本中世の手形 : 新見荘の割符について

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  • <Articles>Medieval Japanese Promissory Notes : Regarding the Saifu of the Niimi-no-sho Estate
  • Medieval Japanese Promissory Notes : Regarding the Saifu of the Niimi-no-sho Estate
  • 日本中世の手形 : 新見荘の割符について
  • ニホン チュウセイ ノ テガタ : ニイミソウ ノ ワリフ ニ ツイテ

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抄録

一五世紀の日本では割符と呼ばれる手形が用いられていた。本稿は、備中国新見荘から京都の東寺に送られた割符を詳細に検討し、割符に関する理解を更新した。まず割符の様式について。割符は小さい紙に書かれ、金額や日付の部分に印もしくは判がある。これと同様の印・判は返抄と呼ばれる一一世紀の受領証にも見える。これらの印・判は文書の真正さを示すものであり、割符の印・判を割印・符丁であると解釈する通説は成り立たない。つぎに割符の機能について。割符は銭を元の所持者から第三者に移転するために用いられた。割符は畿内の問屋もしくは商人によって発行され、商人が地方で商品を買い付ける資金を入手するために用いられた。商人は割符と引き替えに、荘園から京都に送られる年貢銭を入手した。一方、商人から割符を入手した荘園の管理者は、割符を京都の領主に送り、領主は指定された問屋で割符を換金した。銭の所有者を位置付けることにより、割符の取引に関与した人々の立場と役割を従来よりも簡明に説明した。つぎに割符と商品輸送の関係について。従来の研究によると、ある割符の換金に充当される資金は、商人がその割符と引き替えに得た銭で購入して京都に運送した商品の売却代金である。しかし、それとは別に、商品の輸送と売却に関係なく、問屋が管理する商人の資産が割符の換金に充当されることがあり、これが問屋との取引が安定した規模の大きい商人が採用した割符の運用方法であった。

収録刊行物

  • 史林

    史林 96 (5), 615-649, 2013-09-30

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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