<論説>琵琶湖の自然環境からみた中世堅田の漁撈活動

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タイトル別名
  • <Articles>Fishing by the Medieval Katata Estate, as Seen from the Standpoint of Lake Biwa's Natural Environment
  • 琵琶湖の自然環境からみた中世堅田の漁撈活動
  • ビワコ ノ シゼン カンキョウ カラ ミタ チュウセイケンデン ノ ギョロウカツドウ

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抄録

本稿では鴨社御厨であった近江国堅田について、その中世前期における漁撈活動の実態を琵琶湖の自然環境の視点から解明することを試みた。具体的には、水深一〇〇mにも及ぶ琵琶湖の湖底地形および魚類の生態行動と、堅田の漁撈技術段階とを照合し、中世前期の堅田の沖合域での漁法とその利用可能水深について明らかにした。本稿では、音羽庄や菅浦と堅田との漁業相論について分析し、堅田が中世前期から小糸網という独自の技術によって、稀少な秋冬期のフナを漁獲しえていたことを指摘した。さらに堅田は、より深い水域での操業が可能な延縄漁を併用することによって、一般荘民たちの及ばない沖合域で産卵期以外にも魚類を沖取りしていたことを明らかにした。中世前期以来、堅田のみが保持したこれら技術上の優位性に注目すれば、粟津・菅浦など他の供御人に比して堅田のみが琵琶湖漁業において突出した地位を持ちえた背景が理解されよう。

収録刊行物

  • 史林

    史林 96 (5), 650-683, 2013-09-30

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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