<論説>清代, 督撫による地方官人事からみる王朝統治の一側面

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タイトル別名
  • <Articles>One Aspect of the Qing Dynasty's Rule as Seen from Appointment of Local Government Officials by Top Provincial Executives
  • 清代、督撫による地方官人事からみる王朝統治の一側面
  • シンダイ 、 トクブ ニ ヨル チホウカン ジンジ カラ ミル オウチョウ トウチ ノ イチソクメン

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抄録

清朝では適材適所の地方官人事を行うため, 督撫が下級地方官の人事を「題本」で請願できる規定が十八世紀前半に創始された。しかし, 督撫は主に「奏摺」を用い, 規定を越えて人事を請願していた。督撫による地方官人事やそれにともなう諸制度の運用実態をみていくと, 督撫は「地方官人事行政の効率化」と「行政的空白の防止」を志向していたことがうかがえる。このような督撫による地方官人事からみると, その最終決裁は皇帝に委ねられていたが, 地方の意見を多分に汲み上げるとともに, 督撫の「超法規的」請願を可能にする柔軟な運用実態が存在していたことが分かる。清朝前期の皇帝は奏摺を利用して中央集権化を志向したが, 督撫による地方官人事についていえば, より柔軟かつ効率的に運用される構造が生まれた。これは清朝の中央集権的な統治体制のひとつの側面であったと考えられる。

収録刊行物

  • 史林

    史林 102 (4), 599-628, 2019-07-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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