多民族国家ニュージーランドの映画文化と文化政策について : 先住民族マオリの位置づけを中心に

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タイトル別名
  • Cinematic Culture and Cultural Policy in New Zealand : Nationalism and Cultural Identity in Maori Film
  • タミンゾク コッカ ニュージーランド ノ エイガ ブンカ ト ブンカ セイサク ニ ツイテ センジュウ ミンゾク マオリ ノ イチズケ オ チュウシン ニ

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抄録

ニュージーランドの映画文化は、世界的な大成功を収めた三部作の映画「The Lord of the Rings」をモデルケースに、その高い商業的将来性が語られることが多いが、そうした事例は同国の映画文化のほんの一面を表しているにすぎない。イギリスによる植民地支配という経験を経て現在に至る同国においては、「ニュージーランド人のアイデンティティとは何なのか」「それは何に依拠して構築されるべきなのか」という長い歴史を通して繰り返し問われてきた問いとの関係において、「ニュージーランド映画とは何なのか」という問いを巡る様々な議論と模索が続いてきており、それが同国の映画文化と映画文化振興政策に重要な影響を及ぼしてきた。同国では、先住民族である「マオリ(Maori)」の、ヨーロッパからの入植者の末裔である「パケハ(Pakeha)」に対する対抗運動が、土地所有権や政治、教育、その他の文化活動を含んだ幅広い分野で展開されてきており、そうした運動は映画文化の分野でも根強く展開されてきた。そして近年において同国政府が二文化主義(biculturalism)を政策の支柱として掲げると、その影響は、同国の映画文化振興政策についても及ぶこととなった。そしてますます多民族国家化の進む中で、同国の映画文化と映画文化振興政策は、新たな展開を模索する段階に入っている。このニュージーランドの事例は、多民族国家における文化政策の、さらには今後ますます活発化するであろう各国の先住民によるメディア情報発信活動の、ひとつの重要なモデルケースとして位置づけられるものである。そうした点を踏まえながら、本稿では、ニュージーランドの映画文化の動向と映画文化振興政策の方向性を、そこにおける先住民族マオリの位置づけを見据えながら、さらには人間集団におけるアイデンティティの心理と文化との動的な関係性に焦点を当てながら、多角的に分析する。

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