<論説>楊泉の思想 : 合理主義的自然観の一道標

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タイトル別名
  • <Articles>The Idea of Yang-ch'uan 楊泉 : A Milestone of Rationalistic View of Nature
  • 楊泉の思想--合理主義的自然観の一道標
  • ヨウセン ノ シソウ ゴウリ シュギテキ シゼンカン ノ イチドウヒョウ

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抄録

三国・晋の人楊泉は、合理主義的・唯物論的自然観を展開した思想家であった。彼は、自然的世界の始源は「水」であり、「水」に由来する「気」が万物を形成する、という観念のもとに、自然的世界の客観的解釈を提出した。彼においては、自然的世界はすべて「気」の表現形態として把握される。彼はまた、この自然観を人間にも適用することによって、肉体から離れた精神の存在を否定した。さらに彼は、技術について深い関心を示したが、彼の技術観も、その自然観から導かれている。楊泉の思想には、限界・弱点というべき面も存在する。彼が渾天説について、それに従えば斗極が天頂に一致しなくなる、と非難し、また、人の善・悪の行為に対して福・禍が結果するという応報論を肯定していることは、彼における非合理的思想の存在を示している。これらは、彼の思想の合理主義的性格の未成熟にもとづく。楊泉の思想は、中国思想史における自然観の発展のなかで先駆的な座標を占め、かつ、漢・六朝の唯物論的思想の一環をなしている。

収録刊行物

  • 史林

    史林 50 (1), 69-87, 1967-01-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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