<研究ノート>明治期の地理教科書にみる人種・種・民族

書誌事項

タイトル別名
  • <Research Notes>Race, species, and ethnicity described in textbooks during the Meiji period
  • 明治期の地理教科書にみる人種・種・民族
  • メイジキ ノ チリ キョウカショ ニ ミル ジンシュ ・ タネ ・ ミンゾク

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説明

本研究ノートでは, 明治時代の地理科目の教科書にみられる「人種」「民族」「種」および日本帝国内のマイノリティ集団に関する記述を時代系列にしたがって検証する。現在でも日本の一部の教科書や事典などにおいて使用され続けている「コーカソイド」「モンゴロイド」や「白色人種」「黄色人種」「黒色人種」という人類の分類方法は, 19世紀江戸後期から明治初期にかけて科学知として日本に導入されたものである。前者はドイツ人のヨハン・F・ブルーメンバッハが, 後者はフランス人のジョルジュ・キュヴィエが発案した人種区分であった。皮膚の色など可視的な身体形質で人類を分類する「人種」という新しい概念が, ヨーロッパやアメリカから日本に越境し, 変容を見せながら定着することになった。初期は, 海外の教科書を翻訳したものが主を占め, 白人をヒエラルキーの頂点においたが, それらのなかには次第に日本の国民国家と帝国形成のなかで, その分類方法や意味づけを大きく変え, 日本人(大和民族)をヨーロッパ人種と同等に優れていると位置付けるものも現れた。「人種」と, それと不可分な関係をもつ「民族」は, 日本の文明開化, 「脱亜入欧」, その後のアジアにおける帝国支配において, 内政においても対外政策においても重要な役割を果たしていた。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 114 205-238, 2019-12-25

    京都大學人文科學研究所

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