近世前期本草学における実学思想の考察 : 稲生若水と貝原益軒を例に

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  • キンセイ ゼンキ ホンゾウガク ニ オケル ジツガク シソウ ノ コウサツ : イネセイ ワカミズ ト カイ ゲン エキケン オ レイ ニ

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抄録

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[要旨] 本研究は源了円氏が提出した「実学史観」(1986)の視点を用いて日本近世本草学史を再検討するものである。日本近世の本草学は、「実学」という視点から見て「実心」「実証」「実践」など、時期の異なりによって異なった「実」への傾向を表しているが、終始「民生日用」「経世済民」の面で大きな役割を果たしているので、「実学」としての一貫性が見られる。本論の検討範囲である近世前期の本草学における「実学」的特徴としては、朱子学が唱える「人間の内面的真実への追求」という「実」に帰結することができ、「格物致知」という朱子学的スローガンに沿ったものと考えられる。つまり、近世前期本草学の「実学」的特徴は、人間の外部における形而下的な「物」に対する認識を極めることを通じて、自ら内面における通達と真実に到達することである。本論文は、源了円氏の「実学史観」の紹介から入り、それがなぜ本草学史の再検討に新たな視点を提供できるかという理由を説明したうえ、稲生若水および貝原益軒という二人の近世前期の本草学者を例に、彼等の本草学研究における近世前期本草学の「実学」的特徴を論証する。

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