コア図式を用いた複合動詞習得支援のための基礎研究:「とり~」を事例として

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タイトル別名
  • A Study of Japanese Compound Verbs Focusing on "tori-V2" Is the Core Schema Valid as a Pedagogical Device?
  • コア ズシキ オ モチイタ フクゴウ ドウシ シュウトク シエン ノ タメ ノ キソ ケンキュウ トリ オ ジレイ ト シテ

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抄録

日本語複合動詞は文法形式と語彙の両面の要素を持ち、日本語の語彙の中でも極めて重要な役割を果たすが、日本語を学ぶ者にとってその習得は容易ではないことが指摘されている。本稿は、近年新しい意味提示の方法として提案されているコア(コア図式)を用いた複合動詞の習得支援の方向性と可能性を探ったものであり、事例として多義動詞「とる」を前項とする「とり+後項動詞(V2)」を取り上げている。   「とり+V2」は「財布をとり出す」「ゴミをとり除く」のように「とり」に本動詞「とる」の意味がそのまま引き継がれているものと、「先生をとり囲む」「靴をとり揃える」のように「とる」の意味は希薄化しているようにみえるものがある。本稿では、このいずれの場合であっても日本語母語話者の「とり+V2」の意味づけは本動詞「とる」のコアをベースになされていると仮定し、母語話者を対象とした調査データからこの点を明らかにした。具体的には、「囲む」と「とり囲む」のような「単純動詞」と「とり+V2」の意味的差異に着目した調査をおこない、その結果から母語話者の「とり+V2」の意味理解は「とる」のコアがさまざまな形で反映していることを示した。またこれと併せて非母語話者についても同様の調査をおこない、非母語話者は「とり+V2」の意味をどのように捉えているかを観察した。   その結果、非母語話者の捉え方には母語話者とは異なる特徴がみられた。上記の結果を踏まえると、非母語話者が母語話者と「とり+V2」の意味を共有するためには、「とる」のコアを介在させた意味理解が望ましいと考えられるが、コアは言語使用や学習を通して徐々に形成されるものである。そこで本稿では、時間的制約のためコアの内在化には困難を伴う非母語話者に対しては、自然な内在化を待つだけでなく、意識的なコアの内在化を助けるような支援ツールが必要であることを提案し、その支援の方向性を提示した。

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