日本語教育における性差の学習: オーストラリアの学習者の意識調査より

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  • Gendered Language in Japanese: Learner Perceptions in Australia
  • ニホンゴ キョウイク ニ オケル セイサ ノ ガクシュウ オーストラリア ノ ガクシュウシャ ノ イシキ チョウサ ヨリ

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説明

日本語の性差の研究の中で、日本語教育と関連し、しかも、データに基づいたものは数少ない。日本語教育の中での性差の理想的な指導方法を探究する研究の一環として、本稿では、先行の指導者の意識調査 (Iida and Thomson 1999) にも言及しながら、オーストラリアの学習者の意識調査アンケート(オーストラリアの 6 大学対象、回答者 704名)の結果を中心に、報告、考察していく。 学習者の調査の結果、回答者全体としては、性差の認識、受け取り方にばらつきはあるが、性差の学習には意欲的であることがわかった。人称代名詞や呼称に表れる性差の認識度は高かったが、接頭辞や、漢字語彙の使用頻度などの項目は、あまり認識されていなかった。回答者の学習レベルが上がり、日本語話者との接触頻度が高くなり、日本滞在期間が長くなると、性差の認識度が上がる。この傾向に反するのが、漢字語彙の項目で、学習レベルなどに関係なく、一般的に認識度が低く、漢字圏出身の学習者が、他のグループに比べて認識度が高いという結果が出た。 日本語に表出する性差の捉え方、そして、性差を認識し、性差表現を使えるようになりたいかという学習意欲についての質問には、両項目で、全体的には回答者が積極的な姿勢を見せている。その中で、 特に、性差を性差別と捉えるのは中国系、韓国系(特に女性)に多く、性差の学習に一番意欲的なのはオーストラリア系であるという結果が出た。母文化内で性差別の対象となりうる回答者が性差別に敏感であり、他グループと比べて、日本滞在期間の長いオーストラリア系が学習に熱心であるという考察ができる。 指導者調査に現れた教師側の性差指導に対する懸念と、学習者調査の結果には開きがあったので、教師の感覚に頼らず、実際のデータに基づく考察の必要性を再認識した。

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