テレビの喫煙シーン出現率に対する健康増進法の影響 : アニメ番組・ドラマ番組を調査して

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タイトル別名
  • テレビ ノ キツエン シーン シュツゲンリツ ニ タイスル ケンコウ ゾウシンホウ ノ エイキョウ : アニメ バングミ ・ ドラマ バングミ オ チョウサ シテ
  • Effects of the Health Promotion Law on the Rate of Smoking Scenes in Selected Television Programs

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抄録

タバコを吸うことによる健康への影響は、喫煙関連三大疾患としての癌・心疾患・肺疾患を始めとして、その他にも多くの健康への害が知られている1)。そのため喫煙の害を訴える多くの運動が行われ、2003年5月には健康増進法が施行されるに至った。日本の成人喫煙者の割合は、日本たばこ産業(JT)が1965年より継続的に調査しており、その割合は1966年のほぼ5割(49.4%)を頂点にして継続的に低下しており、本年(2014年)はついに2割を切る(19.7%)状況となった。しかし、男女別の喫煙率(2014年)で見ると男性が30.3%で、女性は9.8%であり、男性の喫煙率は女性のそれの3倍強となっている。もっともピーク時の男女別喫煙率(1966年)では、男性が83.7%で、女性が18.0%であるから、女性の喫煙率はほぼ半減であり、男性のそれは半分以下に減少した結果となっている2,3)。 1960年代には、まだ喫煙による健康被害の報告が一般的ではなく、喫煙は仕事をする男の脇役として考えられていたと思われる。また、「一服する」という言葉に現れているように、休憩時間にタバコを吸うことが一般的でありかつ日常的行為であった。キセルでタバコを吸っていた時代であれば、一服するには仕事の手を休めることになるので、休憩時間を取ることであった。しかし、紙巻きタバコ(シガレット)が出現してからは、多くの職場で仕事中にもタバコを吸うことができるようになり、そのような行為も許されるようになった。更に、功成り名を遂げた男は葉巻やパイプタバコをくゆらす、という喫煙の肯定的イメージも作られてきたように思われる。このような喫煙の肯定的イメージ作りには、タバコの製造・販売会社の宣伝4,5)が大いに貢献してきたようである。従って若い世代にとって喫煙を始めることは、仕事をする大人として日常的な行為の一つになっていたのではないかと思われる。 近年、タバコ会社の宣伝は様々な規制により、子供達の眼には入らないよう考慮されてきている。それにもかかわらずタバコを吸うという行為が日常的行為として違和感なく受け入れられるということは、幼少時からの見聞が大きく作用すると思われる。その中では周りの大人の喫煙行為と共に、マスメディアからの見聞の影響が考えられる6)。特に幼少時では、テレビのアニメ番組の影響が大きいと考えられ、成長に伴ってはテレビドラマの影響も大きいと思われる。テレビのアニメ番組の中に喫煙シーンが日常的行為として登場していれば、大人はタバコを吸うものという肯定的イメージが次第に形成されることになる。それが就職・大学入学・成人の時期をキッカケに、あるいはそれ以前の時期に喫煙習慣が始まることは充分に考えられる。一旦喫煙が始まると、タバコに含まれるニコチンは大麻・コカイン並の依存性薬物であるため7)、容易に禁煙ができないことは周知の事実である。一般に、喫煙におけるマスメディアの影響については非常に大きいと考えられ、アメリカ疾病対策センターは、未成年者が映画の喫煙シーンの影響を受けて喫煙を始めるとの観点から、喫煙シーンのある映画への規制強化(成人指定)を求めた報告書を発表(2010年)しているほどである8)。また、映像ではないが、福音館書店発行の月刊誌「たくさんのふしぎ」2010年2月号(対象年齢:小学校3年生から)は、子ども向けの雑誌でありながらタバコ喫煙の場面が何度も描かれているとの理由で、販売が中止されている9)。 本研究は、テレビのアニメ番組やドラマ番組において、健康増進法の施行により喫煙シーンの出現率にはどのような影響があったのか検証したものである。健康増進法施行の前後でテレビ番組のアニメやドラマの中の喫煙シーン出現率がどのように変化したかを調査し、法施行の効果を検証した。これらの結果に基づき、近年の喫煙率低下の要因について考察した。

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