地方自治と教育委員会制度改革 : 「合意」形成のための試論

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タイトル別名
  • Local Autonomy and Reform of the Board of Education
  • チホウ ジチ ト キョウイク イインカイ セイド カイカク : 「 ゴウイ 」 ケイセイ ノ タメ ノ シロン

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抄録

2014年6月に改正され、2015年4月から施行される地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下、地方教育行政法。)をめぐっては、教育委員会制度の大幅な改革を内容とすることから、法制定前から制定後の現在に至るまで活発な議論が交わされてきた。これらの議論は、教育の中立性や自主性を強調するものから、政治家によって体現される(とされる)民意を重視するものを両極として、そこに地方行政の総合化・一本化への諾否、国と地方自治体との関係、という論点も交叉しながら展開されている。また、法制定後には新制度を運用する上での留意点を指摘するものが多くなっている。上記のように教育行政が政治家主導であっても、一般民衆主導であっても、そこに「合意」の形成が求められることでは軌を一にしていると考えられる。すなわち、前者においては、選挙や政治プロセスのなかで「合意」形成が図られ、後者においては、決定・執行を行なう構成員の人選や決定・執行内容についての「合意」が必要となる。しかしながら、これまでの議論では、「合意」の意味内容や形成プロセスについては十分に整理されているとは言えない状況にある。また、本論で触れるように、教育学、教育法学において支持を得てきた「教育/教育行政」二元論に立ったとしても、前者が「合意」の対象から除外されるわけではない。そのため、本稿では、「教育/教育行政」における「合意」について、新しい教育委員会制度並びに地方自治法制の枠組みを前提に、考察を行なうこととする。本論では、今次法改正とその主な論点について概観した上で(2)、「教育/教育行政」をめぐる複数レベルでの「合意」に関する検討を行なう(3)。なお、戦後の教育行政に関する研究業績は質量ともに膨大であるが、本稿はそれらに新たな知見を付け加えようとするものではなく、教育が国政レベルだけではなく地方政治レベルにおいてもアジェンダ化が進行しつつある今日において、教育行政の決定のあり様についてささやかな検討を行なおうとするものである。

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