ヘルマン・ヘッセ『デミアン』 : シンクレールの成長を中心に

書誌事項

タイトル別名
  • Hermann Hesse's Demian : Mainly on Sinclair's Growth
  • ヘルマン ヘッセ デミアン シンクレール ノ セイチョウ オ チュウシン ニ

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説明

1 作品成立当時の事情 : 『デミアン』は1917年, ヘッセが40歳の時に成立し, 1919年に出版された。本作品の成立の事情に関しては, すでによく知られていることとも思われるが, 作家と作品のよりよき理解のために今一度そのことに触れてみたいのである。何よりも重要なのはこの作品が, ヘッセ自身にとって危機の時代に成立したということである。1914年7月に第一次世界大戦が勃発し, その2ヶ月後に彼は「新チューリヒ新聞」にあの有名な訴え『おお友よ, この調子をやめよ!』を発表するが, ドイツの新聞からは翌年に同様な意見の表明をとりあげて攻撃され, 「変節漢」, 祖国の裏切り者という烙印を押されることになるのである。その「ゲーテ的な態度」をロマン・ロランから称えられ, 彼との親しい交際が始まるようになったことは, ヘッセにとって大きな慰めではあっただろうが, 同胞からかように罵倒されたことは何といっても大きな衝撃であったといわねばならぬ。……

収録刊行物

  • 人文研究

    人文研究 19 (6), 421-445, 1968

    大阪市立大学文学部

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