ヴァン・デ・ヴェルデの装飾デザインにおける原始性志向 : 世紀末ベルギーの文芸思潮と「未開民族」に関する言説から

書誌事項

タイトル別名
  • The primitive ornament in Henry Van de Velde's design : Relations among thought, artistic movement, and discourses on "savage people" in fin-de-siecle Belgium
  • ヴァン デ ヴェルデ ノ ソウショク デザイン ニオケル ゲンシセイ シコウ セイキマツ ベルギー ノ ブンゲイ シチョウ ト ミカイ ミンゾク ニ カンスル ゲンセツ カラ

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説明

19世紀から20世紀の転換期におけるヨーロッパの産業芸術の復興運動の中、ベルギーは欧州諸国の中でも特にモダニズムの先駆けとなる、機能性を意識した装飾と抽象的スタイルが生まれたことで注目される。本研究は、こうした近代的スタイルの発祥地となった世紀末べルギーの芸術的・思想的土壌の解明を目指す。本論考では、絵画から応用芸術に転向し、「新しき芸術」論を提唱した工芸美術家アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデに着目する。彼の創作と理論は近年の研究により、日本やジャワ、コンゴなどの影響の側面から見直されつつある。本稿は、さらにオセアニアを含めたより広い影響源の可能性とその背景を、ヴァン・デ・ヴェルデの言論に見られる「原始的」芸術への志向やその実践と見られる作品、また彼が加わっていた前衛芸術サークル二十人会や雑誌『新社会』の関係者による「未開民族」についての言説から考察する。その結果、当時の前衛芸術家や社会改革派におけるヨーロッパ文明の腐敗論や資本主義への批判と、「未開民族」を民衆や労働者の側に位置づけてその文化や美術を賛美する思潮が、ヴァン・デ・ヴェルデのデザイン理論と実践に流れ込んでいると結論づける。

収録刊行物

  • 人文研究

    人文研究 70 43-69, 2019-03

    大阪市立大学大学院文学研究科

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