左官技術における石灰の使用に関する歴史的考察

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  • A Chronological Study on the Using of Lime as a Plasterer's Material in Japan
  • サカン ギジュツ ニ オケル セッカイ ノ シヨウ ニ カンスル レキシテキ コウサツ

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抄録

(1)我が国における左官技術としての石灰使用の歴史は、既に縄文中期後半に行われていた形跡が認められる。構造物を造る際に土を固める場合に石灰を混入させる手法は、仏教伝来に伴う大陸からの技術移入以前に存在していたと考えられる。 (2)古代法制において、既に ⌈ 石灰工 ⌋ という職名が土工や白土工と共に出現し、本格的な石灰生産が開始された。白壁は当初高級仕上げとして一部の使用に限られるが、やがて糊分などの工法の改善によって徐々に広がり、室町期から江戸初期にかけて全国的に広まった。 (3) 左官に関する職名は、初期の ⌈ 土工 ⌋ に始まり、以降 ⌈ 土工司 ⌋ や⌈ 泥部 ⌋ などの職名が混在する時代が続き混在していたが、石灰工の職名は中世を通じて用いられていた。やがて、⌈ 左官 ⌋ という職名は、⌈ 塗大工 ⌋ や ⌈ 塗壁 ⌋ などを経、江戸中期以降徐々に統一され、江戸末期に定着した。 (4)石灰生産は、初期においては貝灰が用いられ、その後火山灰などが用いられていた。やがて、石灰岩を用いるようになるが、本格的な生産は江戸期に入ってからといえる。

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