キリシタン文献における四つがなの表記方法 : 「天草版平家物語難語句解」の拗音ヂャを中心として

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  • キリシタン ブンケン ニ オケル ヨツ ガナ ノ ヒョウキ ホウホウ アマクサバン ヘイケモノガタリ ナンゴクカイ ノ ヨウオン ヂャ オ チュウシン ト シテ

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抄録

マノエル・バレト筆「天草版平家物語難語句解」(以下「難語句解」)は、底本が定かであり、また書写部分と彼自身による記述部分を併せ持つ、版本と写本の中間に位置するものである。この「難語句解」と、同じバレトの手による「バレト写本」における四つがなの表記の間には、ヂに関して違いが見られる。これは、jjiが[iji]と誤読されることを避けるために、一度はjjiに落ち着いた規範的な表記が、「難語句解」成立時までにgiに改められ、その規範的な表記の移行に伴いバレト自身の書記法もjjiからgiへと変化したからだと思われる。またヂの絡む拗音であるヂャについて、キリシタン文献諸本ではgiaと記されているにも関わらず、バレトは「バレト写本」「難語句解」において一貫してjjaと表記している。ヂの表記がjjiだったことを考えるに、おそらく「バレト写本」成立時にはヂャをjjaと記すのが規範的な表記だったと思われるが、その後ヂがjjiからgiへ移行したのに伴い、jjaもgiaと変化したと考えられる。バレトは、ヂに関してはその変化を受容したにも関わらず、ヂャに関しては規範的な表記の移行を取り入れていない。これは、「難語句解」が移行の受容・実践の過渡期に、かつ音声を介在させて成立したものであるからだと思われる。

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