原発性卵巣癌に対する手術と化学療法を施行後に膵臓癌の卵巣転移と判明した1例

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  • A case of ovarian cancer revealed to be metastatic from pancreatic cancer after primary surgery and adjuvant chemotherapy

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<p>卵巣にはさまざまな部位から悪性腫瘍が転移しkrukenberg腫瘍と呼ばれる.しかし,とくに組織型が粘液性腺癌の場合,原発性卵巣癌と転移性癌を区別することはしばしば困難である.今回われわれは,原発性卵巣癌III期の診断で手術と術後化学療法を施行したが,化学療法終了後の造影CT検査で膵臓腫瘍を認め,病理学的検討および臨床経過を総合的に判断した結果,膵臓癌の卵巣転移と診断した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.患者は54歳の女性で,巨大な腹腔内腫瘍を指摘され精査目的で当院を紹介され初診となった.腫瘤は触診で臍上にまで達し,経腟超音波検査では,多房性で囊胞部分と充実性部分を伴う17×17×12 cmの巨大な腫瘤を認めた.腹部造影MRIおよびPET-CT検査により,多房性で充実部にFDGの集積を伴う左卵巣腫瘍および腹膜播種,虫垂の壁肥厚を指摘された.上部および下部消化管内視鏡検査では消化器癌は指摘されず,原発性卵巣癌と診断され,腹式子宮全摘出術,両側卵管卵巣摘出術,大網摘出術,虫垂切除術を施行した.術中に虫垂に癌細胞が認められ,原発性虫垂癌の卵巣転移も疑われたが,免疫染色の結果,卵巣からの転移である可能性が高く,左卵巣原発の粘液性癌IIIc期の診断となった.6サイクルの術後補助化学療法後,造影CT検査により膵臓に腫瘍が検出された.MR胆管膵管撮影検査(MRCP)により膵臓癌の可能性が高いことが明らかとなり,超音波内視鏡穿刺吸引(EUS-FNA)により腫瘍は左卵巣腫瘍と同様の腺癌であることが確認された.病理学的検討および臨床経過を総合的に判断した結果,卵巣転移を伴う膵尾部癌で病理学的病期Ⅳb期の診断となった.卵巣腫瘍を治療する際には,転移性腫瘍の可能性を念頭に置くことが肝要である.〔産婦の進歩74(1):94-102,2022(令和4年2月)〕</p>

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