在宅酸素療法を導入しDemand を実現した重症間質性肺炎患者の一例

DOI
  • 山口 愛美
    社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院

抄録

<p>【背景】</p><p>間質性肺炎( 以下、IP) の急性増悪を呈し、在宅酸素療法( 以下、HOT) の導入となった患者を担当した。IPの呼吸リハビリテーションのエビデンスは乏しく、慢性閉塞性肺疾患( 以下、COPD) に準ずると示されている。また、HOT に関するエビデンスのほとんどはCOPD によるものである。今回、症例のDemandを実現するため、酸素流量の設定、機器の選定、在宅サービスの調整を行った。考察をふまえここに報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p>70 歳代女性。診断名:間質性肺炎急性増悪。現病歴:1 年前にIP を診断、自宅で生活していたが、X-60 日に腰椎変形側弯症による腰痛で入院。労作時の呼吸困難ありリハビリ目的でX 日当院へ入院。既往歴:シェーグレン症候群。病前ADL:全て自立。本人Demand:「1 度でいいからまたゴルフに行きたい」。血液データはCRP10.720 ㎎ /dl、KL-6:6930U/ml、動脈血液ガス分析( 安静時、経鼻カニューレ、酸素1 ℓ / 分) はpH:7.44、動脈血酸素分圧:95 ㎜Hg、動脈二酸化炭素分圧:49 mm Hg であった。胸部レントゲンでは、両側の下肺野かつ末梢優位に網状影がびまん性にみられた。胸部CT では、両側の肺底部に蜂巣肺所見が確認された。X + 2 日目の理学療法評価では、SpO ₂:安静時( 経鼻カニューレ、酸素1 ℓ / 分)96%、労作時( 経鼻カニューレ、酸素2 ℓ / 分)86%、聴診:左右の下肺野に捻髪音聴取、MMT:上下肢ともに3、6 分間歩行試験( 以下、6MWT):不可、FIM:93 点であった。</p><p>【経過・結果】</p><p>症例のDemand を尊重し、主目標を「携帯型酸素を持ってゴルフ場へ行き、友人たちと交流する」と設定した。訓練では、実際に携帯型酸素ボンベを使用し、機器の取り扱い方法の説明、歩行訓練、ADL 訓練を行った。また、動作時の呼吸法や休憩方法を繰り返し指導した。X + 55 日目の理学療法評価では、SpO ₂:安静時( 経鼻カニューレ、酸素1 ℓ / 分)98%、労作時( 経鼻カニューレ、酸素2 ℓ / 分)91%、MMT:上下肢ともに3+、6MWT:155 m、FIM:118 点と、運動耐容能の向上がみられた。X + 60 日目に自宅退院となった。退院14 日後に自宅訪問を実施。症例の望みであった、ゴルフ場へ行くことが実現されていた。</p><p>【考察】</p><p>特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドラインには、IP 患者におけるHOT について、「一般にCOPD に通常適応する流量よりも高い流量をとくに労作時に必要とする。」と示されている。症例は動脈血液ガス分析の結果より、軽度の換気障害が考えられた。そのため、主治医の指示であるSpO ₂ 90% 以上を保てる最低限の酸素流量を設定した。症例のDamand を達成するには、長時間の外出に対応できるよう、酸素供給モードは「同調」にする必要があった。しかし、症例は口呼吸が多く、吸気も弱いため、経鼻カニューレからの吸気を感知できず酸素が十分に取り込まないという問題点があった。それに対し、呼吸同調式レギュレータを感度の高いものへ変更すること、酸素流量を増大することで解消された。また、携帯用酸素ボンベを運ぶカートを手押し車型へ変更することで、上肢の筋力不足をカバーした。しかし、HOT 患者の抑うつや身体機能低下についての報告が多数存在する。本症例においても、身体機能の維持を図るための活動量の確保や、病状の進行に合わせた酸素流量の調整などの継続的な介入の必要性があった。退院前から在宅で関わるスタッフと連携を図り、予め退院後の在宅サービスを充実させたことで、症例の望む在宅生活が実現できたと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言を厳守し、患者家族に本報告の趣旨を説明し同意を得た。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390853908036550912
  • NII論文ID
    130008154737
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2021.0_57
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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