膝前十字靭帯再建術後6 ヶ月の膝伸展筋力に影響する術後2 週における大腿四頭筋等尺性収縮時の内側広筋の筋活動電位

DOI
  • 染川 晋作
    福岡リハ整形外科クリニック リハビリテーション部
  • 出口 直樹
    福岡リハビリテーション病院 リハビリテーション部 東京都健康長寿医療センター研究所
  • 馬場 達也
    福岡リハ整形外科クリニック リハビリテーション部
  • 田中 良治
    福岡リハビリテーション病院 リハビリテーション部

書誌事項

タイトル別名
  • 前向きコホート研

抄録

<p>【目的】</p><p>膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:以下,ACL) 再建術後の膝伸展筋力の低下を残存させないために、術前の膝伸展筋力が良好であることが望ましい。また、ACL 再建術後の大腿四頭筋の筋活動電位は膝伸展筋力の向上に関与していることから、筋収縮時の運動単位の活動様式など神経因子の影響を評価することは必要である。ACL 再建術後の内側広筋の筋活動電位は術後2 週に著しく低下するとされているが、その後の膝伸展筋力との関連については明らかとなっていない。そこで本研究では、表面筋電図を用いて大腿四頭筋の等尺性収縮時の筋活動電位を術後2週で計測し、術後6 ヶ月の膝伸展筋力との関連について検証することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>研究デザインはACL 再建術を施行した42 名( 男性15 名,女性27名) を対象とする前向きコホート研究とした。膝伸展筋力は等速性筋力測定器CYBEX NORM を用いて膝伸展筋力を5 試行測定し、患側の最大ピークトルク値を体重で除した体重比(Nm/kg) を術前と術後6 ヶ月で算出した。術後2 週の筋活動電位は、表面筋電図NORAXON を用いて大腿四頭筋の等尺性収縮時の内側広筋(VastusMedialis;以下、VM) と外側広筋(Vastus Lateralis;以下、VL) の筋電図波形を計測した。計測した波形を全波整流化し、McHugh らの方法を参考に5 秒間の平均振幅( μ V) を取得した。統計学的検討は、ACL 再建術後6 ヶ月の体重比の関連要因について、独立変数を術前の体重比、VM とVL の平均振幅とし、共変量を年齢とBody MassIndex としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。統計ソフトはR2.8.1 を使用した。</p><p>【結果】</p><p>術後6 ヶ月の体重比177.4 ± 59.1、術前の体重比158.8 ± 61.4、術後2 週のVM の平均振幅52.3 ± 52.9、VL の平均振幅67.3 ±54.7 であった。多変量解析の結果、ACL 再建術後6 ヶ月の体重比と術前の体重比( β;0.46,95%CI; 0.24-0.69,VIF;1.3)、術後2 週のVM の平均振幅( β;0.26,95%CI;0.02-0.50,VIF;1.2) との間に正の関連性( 調整済み決定係数;0.54) を認めた。</p><p>【考察】</p><p>本研究では、術前の体重比だけでなく、術後2週のVM の平均振幅においても術後6 ヶ月の体重比を予測した。平均振幅は筋収縮に動員される運動単位数および発火頻度を示すとされている。すなわち、術後2 週におけるVM の運動単位数や発火頻度が増大していることは術後6 ヶ月の膝伸展筋力の増大に繋がる可能性が示唆された。術後早期の筋活動には腫脹、疼痛など炎症症状が関連することが示されており、これらに対する介入を術後2 週までに適切に行うことは、術後6 ヶ月後の膝伸展筋力に影響する可能性がある。</p><p>【まとめ】</p><p>ACL 再建術後のリハビリテーションにおいて術前の筋力を高めること、術後2週の筋活動を改善させることは、スポーツ復帰との関連が大きいとされる術後6 ヶ月の膝伸展筋力において重要であることが考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は、所属施設の倫理委員会の承認を得た。本研究の実施にあたり、対象者には研究の趣旨を説明し同意を得た。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390853908036554368
  • NII論文ID
    130008154745
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2021.0_61
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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