外国人労働者の負傷による受診機会の増加について

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  • 小国町・南小国町の例をもとに

抄録

<p>【背景】</p><p>現在、外国人労働者は年々増加傾向にあり165 万9 千人(2019 厚生労働省HP)と言われている。背景には少子高齢化、後継者不足、地域の過疎化等様々な要因が挙げられる。熊本県においても例外では無く、外国人労働者の増加は顕著である。当院における患者データを集計し比較・検討・考察した為、以下に報告する。</p><p>【方法】</p><p>2015 年~ 2019 年の外来患者情報から外国人患者に関して以下のような情報を調査した。(1) 1 カ月当たりの平均受診人数と全患者に対する割合の算出、これらの項目において2015 年と2019 年を比較(2)受診した診療科を抽出、それぞれ割合を算出(3)年齢情報を抽出、分布の算出(4)外科・整形外科を受診した外国人患者の割合を算出</p><p>【結果】</p><p>2015 年~ 2019 年において以下のような結果が得られた。(1) 1 カ月当たりの外国人患者数、及び全患者に対する割合ともに上昇傾向であった。また、2015 年の月平均外国人患者数は3.8 人、全患者に対する割合は0.091% に対し、2019 年の患者数は6.8 人、0.16% とStudent’s t-test にて有意な増加がみられた。( 外国人患者数:p=0.018、全患者に対する割合:p=0.013)(2)診療科に関しては、外科と総合診療科が2015 〜 2018 年まで上位2 位を占めた。2019 年に関して、1 位は産婦人科であったが、2 位は総合診療科、3位は外科であった。また、外科と整形外科を合計した割合は、どの年においても約3割を超え、一番多い年で全体の半分以上を占めた。(3) 20 ~ 30 歳代がいずれの年でも半分以上の割合を占めた。またその割合は上昇傾向を示した。(4)外科・整形外科では、20 ~ 30 歳代の外国人患者の割合は上昇傾向を示した。</p><p>【考察】</p><p>厚生労働省によると、日本における外国人労働者について、2008 年では48万6 千人から2019 年では165 万9 千人と、約3 倍以上の増加が報告されている。また、熊本県の外国人居住者数についても、約5 年間の間に6 千人近くの増加が報告されている(熊本県HP)。当院においても、当該期間における外国人患者数と全体に対する割合は、上昇傾向を示した。また、同期間の小国町・南小国町の外国人居住者数を調べたところ、熊本県HP にて示されたデータと同じような挙動を示した。次に、外国人患者がどのような診療科を受診しているかを調べたところ、総合診療科と外科が大半を占めていた。また、外科・整形外科の割合についても見たところ、一番低い年でも約3 割、多い年で5 割以上を占めていた。これらの結果と、実際の業務でも、労働時に負傷した若い患者のリハビリを行う機会が何例かあった事を受け、増加している外国人患者の中には、労働者として熊本に移住し、仕事中に負傷して受診する人も多いのではないか、という仮説を立て以下の検討を行った。年齢層を調べたところ、半数以上が20~30 歳代の患者であり、その割合は2015 ~ 2019 年にかけて上昇していた。負傷した際、受診する可能性の高い外科・整形外科について、受診した患者総数に対する外国人患者の割合を調べた。その結果、20 歳代と30 歳代の割合が他の世代に比べて高く、その割合は2015 年~ 2019 年にかけて緩やかに上昇した。以上の事から、当院においても、若い世代の外国人労働者が負傷などで受診する機会が増加している事が示唆された。今後、理学療法士としても当地域における外国人労働者の背景や実際の生活等への理解が大切であり、言語やコミュニケーション手段や手法だけではなく、患者の役割や居場所等の精神的ケア等も含めたトータルマネジメントが大切であると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>開示すべき利益相反はなし。本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、個人情報に配慮して検討を行った。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390853908036558080
  • NII論文ID
    130008154657
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2021.0_73
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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