筋力強化に立ち上がり動作が有効だった一症例

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>今回、変形性腰椎症を呈した症例を評価させていただく機会を得た。本症例は、90 歳以上の超高齢者であり、施設に入居されている。初期評価時、左杖歩行にて、右膝関節の膝折れ出現があり、転倒予防のため右腋窩介助下で歩行練習実施していた。居室では、シルバーカー歩行での移動であり、職員が付き添う。Demand は「杖を突いて安全に歩きたい。」であり、膝折れ消失を目指しリハビリテーション(以下リハビリ)を実施した。プログラムとして、関節可動域訓練、重錘バンドを使用した下肢筋力強化訓練(以下下肢筋力訓練)、歩行練習を実施した。しかし、2 ヶ月経過しても膝折れ改善みられなかった。そのため、下肢筋力訓練を中止し、新たに立ち上がり動作練習を取り入れた。</p><p>【方法】</p><p>令和3 年2 月から4 月までの2 ヶ月間、週3 回40 分のリハビリ実施した。プログラムとして、関節可動域訓練、立ち上がり動作練習、歩行練習である。立ち上がり動作練習は、平行棒と垂直に座り、平行棒を把持する。立ち上がり時に、上肢優位になったら終了とし、それを1 セットとした。</p><p>【結果】</p><p>下肢筋力訓練から立ち上がり動作練習に変更したことにより、歩行時の膝折れが消失した。2 月は、連続立ち上がり動作40 回であったが、4 月には連続67回まで増加した。Manual Muscle Testing(以下MMT)では、2 月は大腿四頭筋3/4(右/ 左)であったが、4 月は4/4 と、右側にて改善がみられた。30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30 テスト:平行棒把持で実施)は、2 月は9 回であったが、4 月は13 回であった。Timed up & go test(以下TUG)は、右腋窩介助下で実施し、2 月は32 秒16 であったが、4 月は28 秒31 であった。10m 歩行も右腋窩介助下で実施し、2 月は歩数42 歩:23 秒56 であったが、4 月は歩数39 歩:24 秒69 であった。</p><p>【考察】</p><p>連続立ち上がり動作、MMT、CS-30 テストより、右大腿四頭筋強化することができ、回数も増加した。下肢筋力強化したことにより、歩行中の右膝関節の膝折れが消失したと考える。下肢筋力訓練では、当初は1 ㎏の重錘バンドで実施していたが、変化みられなかったため、2 ㎏の重錘バンドに変更した。しかし、2 ㎏の下肢筋力訓練でも変化みられなかった。これは、下肢筋力訓練はOKC での訓練であり、負荷量が少なかったと考える。立ち上がり動作練習はCKC での訓練であり、負荷量も増加し、OKC に比べて筋出力が向上したことで膝折れ消失に繋がったと考える。柚原は、「下降相は重力方向に対して順方向の運動となり、過度の屈曲による膝折れや転倒を防ぐために下肢関節運動を制動する必要がある。」と述べており、大腿四頭筋の遠心性収縮により筋力強化が図れたと考える。</p><p>【おわりに】</p><p>今回は一症例でしか、立ち上がり動作練習はできていない。歩行中の膝折れは消失したが、ADL 改善みられなかった。今後も、ADL 改善に結びつけたリハビリを実施していく。本院は超高齢者や高齢者が多い超維持期の医療機関であるため、「杖で歩きたい。」や「安全に歩きたい。」という方を対象として、立ち上がり動作練習を実施していき、筋力強化することが可能なのか研究していく。また、本症例はリハビリに対して積極的である。非積極的な症例に対しても有効なのか研究していく必要があると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に則って実施し、得られたデータは個人が特定できないよう配慮した。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390853908042780288
  • NII論文ID
    130008154625
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2021.0_32
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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