認知症治療病棟における認知症リハビリテーションの効果

  • 早田 善幸
    公益社団法人 いちょうの樹 メンタルホスピタル鹿児島

書誌事項

タイトル別名
  • 介入前後の評価による比較検討

説明

<p>【目的】</p><p>認知症は「介護が必要になった主な原因」の第1 位となり,2025 年には認知症有病者数が700 万人に達すると予想されている。認知症診療において薬物療法は, 主たる治療の一つだが, 根治治療薬を持たない現状において認知症リハビリテーション( 以下, 認リハ) などの非薬物療法も重要な役割を担っている。当院でも,2019 年7 月より認リハを開始し, 理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)による専門的な治療・訓練を実施している。今回, 介入前後の評価内容を比較し, 身体・認知機能, 行動・心理症状( 情動や介護負担など) への効果について可視化し, 当院認知症治療病棟における認リハの役割を再確認することを目的とする。</p><p>【方法】</p><p>対象:認知症治療病棟入院患者において本研究の同意を得られた方(22 名) とした。各職種(PT・OT・ST) にて週3 回, 認リハを実施し, 入院時と経過時( 概ね3 か月後) にて身体・認知機能, 行動・心理症状(BPSD) について評価を実施した。評価項目については以下の通りとした。身体機能:FIM( 運動項目) 認知機能:FIM( 認知項目),HDS-R,MMSE 行動・心理症状(BPSD): NPI-NH それぞれの評価項目をWilcoxon の符号付順位和検定にて比較した。</p><p>【結果】</p><p>NPI-NH にて「妄想」「幻覚」「興奮」「不安」「易刺激性」の各重症度で有意に改善した。その他の評価項目では有意差を認めなかった。有意差はみられなかったが, 平均値にて,NPI-NH( 重症度・負担度),FIM,MMSE にて維持・改善という結果であった。</p><p>【考察】</p><p>今回,NPI-NH における有意差は, 認リハのBPSD に対する効果を示していると考えた。NPI-NH において有意差を認めなかった「うつ」や「無関心」などの症状は, 対象者が認リハに, 意欲的に集中して取り組むことが難しかったということも, 影響したのではないかと考える。佐藤によると, 運動が脳へ与える影響について「注意や精神運動速度, 実行機能, 記憶などが改善する」と述べている。また, 近藤らによると「学習療法の効果が日常生活へと転移可能である可能性が考えられる」と述べている。今回の結果は, 認リハは単に身体的機能効果だけでなく,BPSD の改善により, 介護負担やADL の維持・改善に寄与したと考える。今後の課題として, 対象者に対する他職種との環境設定や関わり方などの情報共有やご家族に対する対応( 家族向けの認知症教室の実施など) を検討する。今後も認リハについて, 様々な評価を通し, より効果的な介入方法について模索していく。その中で, 認リハにもっとも反応性の高い身体・認知機能の程度といった相関が得られたならば, 今後の地域内医療連携の中で相互に,より質の高い医療・福祉につながるのではないかと考えた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究の計画立案に際し、事前に当院の倫理委員会の承認を得た(承認日:令和2 年6 月25 日)。また、研究の実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い、同意を得た。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390853908042785792
  • NII論文ID
    130008154672
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2021.0_87
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ