自然との対話ⅩⅣ(2015)「回天」 独奏フルートのために

抄録

回天は,旧日本海軍の兵器で,しばしば“人間魚雷”と表現される。この兵器は,全長15メートルほどの小型の潜水艦で,爆薬を約1.5トン積載して米国の艦船に体当たりする。回天は,主に潜水艦の甲板に搭載されて戦況によって隊員が回天に乗り込んで出撃したが,脱出装置がないことから,一度出撃すると生きて帰ることはなかった。山口県周南市の大津島に,周南市回天記念館がある。ここには回天に関する資料のほか,隊員の遺書などが展示されている。また,同記念館の近くには回天の訓練場跡が残っているが,ここに立って“必死の兵器”の訓練を受けた隊員を思うと胸が熱くなる。本曲は,回天によって貴い命を失った多くの人たちを悼んで作曲したものである。演奏に際しては,大津島の回天記念館と回天訓練場跡地で撮影した映像を投影する。本曲の初演は,2015年12月6日に,就実なでしこホールで開催された第22回岡山フルートの会チャレンジコンサートで作曲者自身により行われた。

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