日本の中小企業勤労者における気分障害と精神疾患の関連に関する自殺関連行動予防の研究

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  • Preventing mood disorders associated with suicide-related behaviors among small- and medium-sized enterprise workers in Japan

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抄録

日本の自殺者数は2009年以降減少傾向が続いているが,世界的にはその水準は依然として高い.最近では新型コロナウイルス感染症関連による失業を苦にした自殺も増加している.また過労死や労災事案の増加などから,勤労者のメンタルヘルス対策が喫緊の課題となっている.以前にわれわれは精神医療的支援の不十分だった中小企業勤労者を対象にしたメンタルヘルス活動より得られたデータを用いて,自殺関連行動と関係の強い気分障害をスクリーニングすることは自殺予防に役立つという仮説を実証した研究を報告した.本研究では自殺予防のために気分障害と関係の強い精神疾患をスクリーニングすることが更なる一次予防となるという考えの元に,前回の研究データからさらに,うつ病群,双極性障害群,気分変調症群,そして前述した3つを網羅した気分障害群についてそれぞれの対照群と比較検討した.その結果,3つを網羅した気分障害群の補正オッズ比はパニック症群3.2,社交不安症群2.6,広場恐怖症群2.1,全般性不安症群1.8の不安症群,また強迫症群2.1,神経性大食症群2.8であった.また双極性障害の補正オッズ比は薬物使用障害群2.0,また気分変調症群では神経性無食欲症群3.3と有意な関連を認めたのもの,気分障害群には反映されない結果となった.しかし双極性障害群と気分変調症群をそれぞれ個別にスクリーニングする可能性があり,気分障害群の結果と合わせて見逃せない精神疾患であった.これらの結果より古典的診断でいう神経症に相当する精神疾患と有意な関連があった.本研究では不安症,強迫症,そして摂食障害などのスクリーニングが勤労者の気分障害の発症抑制に寄与することが示唆された.本研究結果が間接的に勤労者の自殺予防につながることを期待したい.

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