病院事業を営む地方公営企業のコスト・ビヘイビアとコスト構造 ―混雑コストの観点からの分析―

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  • ビョウイン ジギョウ オ イトナム チホウ コウエイ キギョウ ノ コスト ・ ビヘイビア ト コスト コウゾウ : コンザツ コスト ノ カンテン カラ ノ ブンセキ

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説明

<p> 本論文では,公立病院のコスト構造やコスト変動を,実証的なコスト・ビヘイビア研究の観点から明らかにする。ここで,実証的なコスト・ビヘイビア研究とは,コストの変動パターンやコスト構造,それらの決定要因を探る研究群である。この研究群での研究蓄積は,コスト発生の基本的なメカニズムに関する理解を促進してきた。こうした研究蓄積に基づいて公立病院を分析することによって,公立病院のコスト構造やコスト・ビヘイビアが明らかになり,公立病院の経営に関する実践的なインプリケーションが得られると期待される。</p><p> 本論文の具体的な目的は,公立病院を対象として,病床の混雑度合いの代理変数としての病床稼働率とコストの硬直性との関係,さらに病床稼働率の変動リスクと混雑コストとの関係を明らかにすることにある。分析対象となる公立病院として,総務省が公開している地方公営企業年鑑から病院事業を選択し,1,505 病院・15 年,合計12,595 病院・年から構成されるアンバランスト・パネルデータを得た。</p><p> 分析の結果,病床稼働率の変動リスクはコストの硬直性の程度を高め,変動費率の減少につながること,さらに,病床稼働率の上昇はコストの硬直性の程度を低下させ,変動費率の上昇につながることが明らかになった。これらの発見は,混雑コストを回避する経営行動を公立病院がとっているにもかかわらず,病床稼働率の上昇に起因して生じる混雑コストが完全に排除されているわけではないことを示唆する。もっとも,病床稼働率が100%の場合でも,混雑コストを加味した変動費率は1 を下回っており,利益を減少させるレベルには達していないことを回帰分析の結果は示している。病床稼働率の上昇に伴い混雑コストが発生するとしても,それは病床稼働率の上昇に伴う収益の増加分からカバーされているといえる。</p>

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