社会資本の生産力効果に基づいた日本の社会資本の資産価値 ―社会資本の稼働率を考慮した推定による投資財価格の経済学的評価―

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  • シャカイ シホン ノ セイサンリョク コウカ ニ モトズイタ ニホン ノ シャカイ シホン ノ シサン カチ : シャカイ シホン ノ カドウリツ オ コウリョ シタ スイテイ ニ ヨル トウシザイ カカク ノ ケイザイガクテキ ヒョウカ

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抄録

<p> 2012 年12 月の中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故以降,日本の社会資本の老朽化は政治的にも重要な課題として認識されつつあるものの,社会保障向け支出に比べて,公共投資向け支出は,確保するのに苦慮している状況にある。こうしたなかで,国や地方公共団体において,資産を明確に認識する複式簿記ベースの財務書類が作成,公表されるようになったことは,社会資本が資産として明示されることによって,予算確保に苦慮している状況を変える契機になると考えられる。ただし,現在の日本の公会計での社会資本の資産価値は取得原価で評価され,その評価法が経済的価値を適切に反映しているかは検討の余地がある。そこで,本論文は,経済的価値からみた,日本の公会計での社会資本の資産価値評価の妥当性について,社会資本の稼働率を明示的に考慮した生産関数を用いて推計する社会資本の生産力効果から,追加的に実施する公共投資の経済的価値を推計することで評価したものである。</p><p> 本論文で新たに採用した,社会資本の稼働率を明示的に考慮したコブ=ダグラス型生産関数による社会資本の生産力効果の推定結果は,有効性の観点から好ましく,推定結果も先行研究の結果とほぼ一致している。また,本論文で得た社会資本の生産力効果の推定値を用いて,2010 年度における2005 年価格で1単位の公共投資による経済的価値の増加額は,推計に用いたデータに依存するが,大都市圏では少なくとも1 を上回り,先行研究と整合的な結果を用いれば全ての地域で1 を上回っていた。これは,経済的価値の観点からみれば,とくに大都市圏では,新たな公共投資を資産として計上する場合,取得原価を上回る価値で評価すべきであることを示しており,現在の日本の公会計において,資産としての社会資本は過少評価になっているともいえよう。</p>

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