Differences in local perceptions about environmental changes among residents of small communities in eastern Siberia

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  • 東シベリアにおける環境変化に関する地域住民の認識と差異東シベリアにおける環境変化に関する地域住民の認識と差異

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<p>1.はじめに 気候変動や地球温暖化の影響により、シベリアなどの高緯度地方では、永久凍土の融解に代表される環境変化が急速に進行している。そのプロセスやメカニズムは、地域ごとに固有の自然環境や社会環境要因によって異なり、各地域における現状や環境変化のメカニズムを把握する必要性が指摘されている。また、そのような環境変化に適応した生業・生活様式を検討し、社会的レジリエンスを高めていくためには、地域住民や行政関係者、研究者などの多様なステークホルダーが現状や地域の課題を認識する必要がある。他方、環境変化の認識には、ある地域に居住する集団の内部や集団間において差異があることが知られている。 発表者らは、これまで永久凍土が発達する東シベリア・サハ共和国において、環境変化に関する住民の認識とその差異に関する調査を実施してきた。本発表では、サハ共和国の小規模コミュニティを対象に、環境変化に対する住民の認識と集団内の認識の差異について紹介する。そして、その結果を他地域における結果と比較を行い、社会的レジリエンスを向上するにあたり、ステークホルダー間の認識のギャップをどのように捉えていけばよいか考察する。 2.方法 2018年3月にチュラプチャ郡に位置するカヤクシット村、2018年8月にゴルニィ郡のマガラス村において、地域住民(サハ)を対象にアンケート票を用いた現地調査およびインタビュー調査を実施し、環境変化に関する認識や直面する課題などについて把握した。対象としたのは、カヤクシット村56名、マガラス村75名である。 3.結果と考察  チュラプチャ中心地やカヤクシット村では、永久凍土が融解することによって形成されるサーモカルストが顕著に発達していた。現地踏査の結果、耕作放棄地において融解の進行が顕著であった。また、耕作放棄地に住居が建築された場所では、住居近くにサーモカルストが形成され、盛り土をするなどの対応を迫られていた。  インタビューおよびアンケート調査の結果、住民は身近な環境の変化を多様な観点から認識していることが明らかとなった。永久凍土の融解や洪水発生など、気候変化に関連する懸念の声が多数抽出された一方で、飲料水の水質や地域のゴミ問題など、健康に関わる問題に対する関心も高いことが明らかとなった。 他方、地域で進行している環境変化に関する認識には、集団内部で大きな差異が認められた。例えば、降水量の変化については、近年降水量が多い年が増えているか降水量が少ない干ばつ年が増えているかという認識について、同じ地域の住民においても意見が分かれる傾向が確認された。  環境変化に対する認識のギャップは、地域における環境変化への対応行動の差異に結び付く可能性がある。こうした点は、在来知と科学知とのギャップとして描くことも可能であるが、重要な点は、そのような対応の多様化が社会的レジリエンスの向上に結び付くかどうかという点にあるだろう。 付記 本研究は、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)およびベルモント・フォーラムCRA「東部ロシア北極・環北極域の凍土水文とレジリエンス」の一環として実施している。</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390854717714672896
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_92
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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