伊能図の地図仕立てを検証する

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  • Examination of the surveyed maps and cartography of Japan by Tadataka Inoh

抄録

<p>1 シンポジウムの開催趣旨 「伊能図」と総称される地図類は多義的で,すでに正本が失われている文化元年(1804)「日本東半部沿海地図」や文政4年(1821)の最終版伊能図とされる「大日本沿海輿地全図」のみならず,複製図や写本・模写本,地図下図(原図),さらには測量下図やそれらを接合した寄図などが含まれる。これらの「伊能図」については,作製時期やスケール(大中小図・特別図)が異なるにもかかわらず,それらの関係性の詳細については十分に検証されてこなかった。 伊能図完成200年を迎えたことから,本シンポジウムでは,各地の関係機関に所蔵される大名家献上本伊能図や測量下図・定稿図等の料紙・彩色・針穴・記載内容などについて,超高精細画像データや非破壊調査などの最新技術を用いて再検証し,「伊能図」の成立過程の一端を明らかにしようとするものである。 これらの伊能図の原本調査は,1) 徳島大学附属図書館による2014・2015年度「伊能図検証プロジェクト」,2) 2018~2021 年度科研費補助金・基盤研究(A)(一般)の研究課題「伊能図の成立過程に関する学際的研究-忠敬没後200 年目の地図学史的検証-」(研究代表者:平井松午,研究課題番号18H03603)のもとに,専門分野の異なる共同研究者によって取り組まれ,研究成果報告として学術図書『〈稿本・大名家本〉伊能図研究図録』ならびに『伊能忠敬の地図作製-伊能図・シーボルト日本図を検証する-』を刊行の予定である。 2 伊能図調査  伊能図を所蔵する徳島大学附属図書館,伊能忠敬記念館,国立歴史民俗博物館,早稲田大学図書館,長崎歴史文化博物館,松浦史料博物館,京都大学附属図書館,国立国会図書館,宮城県図書館,ゼンリンミュージアム,山口県文書館で実施した共同調査では,原本の実見とあわせて,LEDライトを用いた針穴の確認(一部,600~800ppi高精細画像の作成),100倍光学顕微鏡・デジタルマイクロメーターを用いた料紙の計測,さらにはデジタルマイクロスコープ・反射分光器・蛍光X線分析計による彩色材料分析などにより,「伊能図」の地図仕立て(地図作製)について検討した。 この他に,国文学研究資料館,東京大学総合研究博物館(現在は東京大学大学院理学系研究科地球惑星専攻),東京大学総合図書館,学習院大学図書館,神戸市立博物館,広島県立歴史博物館等に所蔵の伊能図についても比較検討資料とした。 3 伊能図の地図仕立て 多様な「伊能図」が成立した背景には,寛政12年~文化13年(1800~1816)の10次にわたる全国測量の実施経緯や複雑な地図仕立てが反映されているが,作製手順はおおむね図1のように要約される。第1次測量図や特別図を除けば,各所蔵機関の伊能図はおおむねこれらのいずれかに分類されることになる。 このうち,大図についてみれば,文化元年の「日本東半部沿海地図」では測量地域を単位として作製されているのに対して,文政4年の最終版伊能図では中図を南北/東西方向に再分割(214枚)した図郭に再編されている。また,最終版伊能図(中図・小図)の作図に際しては,新たに下図(原稿図)が作製されたとみられる。 報告時では,こうした地図編成の異なりや大中小図と下図との関連性に注目したい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390854717714674432
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_96
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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