バンコク都市圏におけるホテルの立地傾向とその要因

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タイトル別名
  • Location trends and factors of hotels in Bangkok Metropolitan Area

抄録

<p>1. 研究目的と方法 </p><p> 本研究は,バンコク都市圏におけるホテルに着目し,時間的・空間的な立地傾向を明らかにするとともに,その要因をグローバル・ローカルの両側面から明らかにすることを目的とする. 本研究では,まずタイ及びバンコクの概況を把握するため,文献により経済,交通,観光などを示した.次に,バンコク都市圏におけるホテルの分布をGIS上で示し,ホテルのランク別に空間的特性を明らかにした.その際に都心と駅からの直線距離を測定した.そして,500mメッシュによる立地の経年変化を示し,ホテルが集積している地域を事例に立地傾向とその要因を考察した.ここで,ホテルのデータについては,Pythonを用いたWebスクレイピングによってBooking.comに掲載されたデータを収集し,他の予約サイトなどによって精度を高めたものを利用した.また,本研究におけるバンコク都市圏は,バンコクの地理的中心にあたるサイアム駅を中心とする半径20km圏内を対象地域とした.</p><p></p><p>2.結果と考察</p><p> まずバンコク都市圏におけるホテルの立地傾向は以下の2点が明らかになった.1点目は,バンコク都市圏中心部10km圏内の特定地域に立地が集中していたことである.とりわけスクンビット・シーロム地で区はバンコクのCBDであることから,ホテルが多く立地しており,バンコクにおいて集積が先行する地域であった.しかし,2010年以降は出店数が著しく増加し,既存のホテル集積地に新規ホテルが出店するだけでなく,大通りの郊外方向や細い道路沿いにも集積地域が拡大していった.また,上記以外の都心地域においても新たなホテル集積地を形成または形成途中の地域がみられた.これらの地域では,2000年以前にホテルが数件立地していたものの,2010年以降大きく増加したことが特徴的である.そして2点目は,都心郊外ではランク3のホテルを中心に分散的に立地しており,ホテル形態及び立地の多様化,郊外化が進行していることである.特にそれは鉄道沿線や都市開発が進む地域で2010年代以降に出店が増加している傾向にある.</p><p> 次にホテルの立地要因を明らかにした.まずグローバルな要因は以下の通りである.1960年代以降の外国企業誘致政策によってタイでは自動車産業をはじめとして工業団地がバンコク郊外を中心に形成された一方で,駐在員は都市アメニティが高い都心部に居住する傾向にあり,それぞれのエスニックコミュニティが都心部には形成された.そのような中でホテルは,外国人の利用が多く,駐在員が居住する都心部のスクンビット・シーロム地区に多く立地しており,外国人を主体として都心部の宿泊需要が大きかったと考えられる.2010年以降になると,世界的な観光需要の高まりに伴って外国人観光客数が年々増加し,その結果ホテルの出店数も需要にあわせて増加していったと考えられる.さらには,世界経済におけるASEAN市場の注目,さらにはアジア経済共同体の発足やインドシナ半島の地理的中心であることも関係し,バンコクはグローバル経済での立ち位置を確立したことも関係していた.</p><p>  他方,ローカルな要因としては,タイ人の所得が全体的に向上したことで消費機会が増加し,国内観光も増加したことや,鉄道網が急速に発展し,その沿線では都市開発に伴ってホテルを含む不動産投資が活発に行われていたことなどが明らかになった. 以上,バンコク都市圏におけるホテルの立地要因には様々な要因が関係していることが明らかになった.その中でも国家政策としての外国企業誘致とそれに付随する駐在員の存在や,外国人観光客の増加など,グローバルな影響を色濃く反映している点がバンコクにおけるホテル立地の特徴としていえよう.一方で,国内の交通インフラの整備や個人消費機会の増加などに伴う国内流動が活性化している点も無視できない.すなわち,東南アジア特有のグローバル経済に誘引されたローカルな都市の発展がバンコク都市圏のホテル立地に影響を与えていることが示唆された.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390854717722281344
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_196
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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