成人期に初めて境界域知的発達と診断された症例について

抄録

<p>【目的】成人期になって初めて境界域知的発達と診断された症例を取り上げ,受診するまでの経過や,診断後の対応,予後について考察する。【対象と方法】対象:A精神科診療所を受診しWAIS-IIIを実施,全IQが70台の境界域知的発達と診断された16歳から53歳の12 例(男性6名,女性6名,平均年齢25歳6ヵ月)である。方法:全ての症例について,主訴,生育歴,家族歴,受診歴,診断名,経過などを診療録をもとに調査,WAIS-IIIの結果もふまえて分析する。【結果および考察】12例のうち11例が発達障害や不適応を主訴として受診しており,すでに発達の問題を感じていたものと考えられた。しかし知的発達の遅れを訴えた症例は幼児期から発達障害と診断されていた3例にとどまり,青年期以降に初めて境界域知的発達と診断されたケースは9例であった。WAIS-Ⅲを分析するとVIQまたはPIQのいずれかが平均以上あることや発達障害の症状が目立っていたことから,発達の遅れに気づかれ難かったものと推察できた。また診断後,療育手帳や精神障害者手帳を取得した者は5例で,就労支援,生活保護などの福祉サービスを使うようになった。</p>

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