ジェズ・バターワース作『フェリーマン』における政治的暴力の再トラウマ化と再生への喚起

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  • Re-traumatizing Political Violence and Evoking Regeneration in “The Ferryman” by Jez Butterworth

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2018 年にトニー賞を受賞したジェズ・バターワースの『フェリーマン』(The Ferryman,2017)は、1980 年代の北アイルランドにおいて、英国の支配からの独立を目指すアイルランド共和国軍(IRA)の武力闘争である、「ザ・トラブルズ」と呼ばれる時期を背景に、北アイルランドに住む元IRA 活動家のクインと彼の大家族への政治的暴力の影響を描いた戯曲である。年に一度の収穫祭の日に、IRA の政治的暴力の犠牲になり、泥炭沼に埋められていたクインの弟の遺体が発見される。埋められた過去の暴力の発見は、英国支配への国家の歴史的な政治的圧迫とIRA 組織集団的暴力の実態を明らかにし、犠牲者だけではなく、その家族に及ぼす永続的トラウマを露見させる。本稿では、バターワースが描く『フェリーマン』における、政治的暴力による再被害と再トラウマ化の実態と、それを乗り越える豊かな伝統と人間性の賛美について考察する。

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