子宮移植手術の安全性向上のためのカニクイザルを用いた基礎動物研究

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抄録

<p>【目的】2014年にスウェーデンで世界初の子宮移植後の妊娠出産が報告され、その後各国で子宮移植による出産の臨床報告が相次いでいるが、日本では動物実験報告にとどまるのが現状である。今回手術の安全性と低侵襲性の向上を目指し、カニクイザルを用いて自家子宮移植手術研究を実施したので報告する。</p><p>【方法】年齢9歳6か月、体重5.0kgのカニクイザル1頭を用い、全身麻酔下に開腹し子宮を摘出し、再び同一個体へ子宮を移植し、血流の再開を確認した。本研究は研究施設より動物実験計画の承認を得て、所定の動物実験の適正実施講習を受講し、動物実験の倫理規定を順守して行われた。</p><p>【成績】カニクイザルの内腸骨動脈(両側内径2.0㎜)と卵巣静脈(内径右2.5㎜、左2mm)を吻合血管として選択した。血管走行を確認できるまで婦人科医が露出操作を行い、腟管切除後に移植外科医が血管を剥離切断し子宮摘出した。臓器灌流後、形成外科医が右内腸骨動脈を右外腸骨動脈へ、右卵巣静脈を右外腸骨静脈へと吻合を行い、右側からの血流の再開を血管拍動と色調にて確認した。総阻血時間1時間47分であった。</p><p>【結論】サルをモデルとした子宮移植研究においては血管縫合にヒトにおいて要求される以上の細密な手術手技が必要であり、ヒトにおける臨床手技との乖離があることに研究の限界がある。適切な執刀医交代時期を含めたチーム医療の習熟が子宮移植成功の鍵と思われた。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 56 (Supplement), s66-s66, 2021

    一般社団法人 日本移植学会

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