秋吉石灰岩周辺のペルム紀付加体の地質構造と付加モデル

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Geological structures of Permian accretionary complex around the Akiyoshi Limestone, and its possible accretionary process

抄録

<p>山口県中央部には、東西約15km南北約8kmの広がりをもつ秋吉石灰岩が分布している.秋吉石灰岩は,前期石炭紀から中期ペルム紀の化石を含み,パンサラッサ海において噴火した海底火山の頂部に形成された石灰礁を起源としている.秋吉石灰岩の下位には玄武岩溶岩があり、石灰岩と玄武岩を合わせて、秋吉ユニットとする。秋吉ユニットの南東側と北西側には,チャートー砕屑岩シーケンスの繰り返しからなる大田ユニット(大田層群)と別府ユニット(別府層)がそれぞれ分布している.大田ユニットと別府ユニットは,海洋プレート層序上部の剥ぎ取りによって形成された中期ペルム紀の付加体である.秋吉ユニットの南西側には,砂岩泥岩互層や含礫泥岩層からなる常森層が分布している.常森層については,海溝充填堆積物の付加で形成された説(Sano and Kanmera, 1991)があるが、本報告では、前弧海盆ないし陸棚堆積盆で形成された説(Wakita, 2018)を採用する.従って本報告では、付加体の区分用語として層や層群ではなくユニットを用いるが、常森層にはその用語を適用しない。 </p><p> 秋吉石灰岩は,小澤(1923)によって層序が逆転していることが明らかにされ,その逆転構造の形成については様々な横臥褶曲構造が検討されてきた(藤川ほか, 2019).一方, Sano and Kanmera(1991)は,秋吉石灰岩が海溝で崩壊する際に上下が逆に積み重なったと考えた.秋吉石灰岩の逆転構造に関するこれらの研究は,いずれも石灰岩体を中心に検討され,同時期に形成された他の付加体構成要素との関係はあまり考慮されてきていなかった.著者らは,秋吉石灰岩周辺の地質体の地質構造に着目し,秋吉石灰岩の逆転構造の形成メカニズムの再検討を試みることにした.今回検討したのは,秋吉石灰岩北西部に分布する別府ユニットの一部である.別府ユニットは,大田ユニットと同様にチャートー砕屑岩シーケンスの繰り返しからなるが,地層の傾斜が低角度であるために,地質図上ではその繰り返しが明瞭ではない.今回調査を実施したのは,美祢市秋芳町別府西部の湯の上川流域及び美祢市於福北西—雁飛山地域である.</p><p> 湯の上川流域では,地層の走向はほぼ東西方向で,北側が南に南側が北にそれぞれ20-40度傾斜している.標高約150mの湯の上川沿いには泥岩が露出し,標高200-230mに酸性凝灰岩ないし珪質泥岩が露出している.標高230m-300mに主としてチャートが露出しており,調査範囲で一番高い標高220-230mに泥岩優勢な砂岩泥岩互層が分布している.一方,於福西方—雁飛山地域では,標高の低い地点から高い地点に向かって泥岩→酸性凝灰岩ないし珪質泥岩→チャートの順で重なっている.</p><p> 付加体を形成する海洋プレート層序では,下位からチャート→珪質泥岩ないし酸性凝灰岩→泥岩及び砂岩と重なることが知られており,本調査地域の地層群は,上下が逆転した海洋プレート層序から構成されていることがわかる.つまり,秋吉石灰岩の逆転構造は石灰岩体が単独で逆転しているのではなく,秋吉石灰岩とともに砕屑岩類を主体とした付加体が大規模に逆転していることから,その形成メカニズムを再検討することが必要となる. </p><p>引用文献</p><p>藤川将之・中澤 努・上野勝美(2019)地質学雑誌, 125, 609-631.小澤儀明(1923) 地質学雑誌, 30,227-243.</p><p>Sano, H. and Kanmera, K.(1991) Jour.Geol.Soc.Japan, 97,631-644.</p><p>Wakita, K., Yoshida, R. and Fushimi, Y. (2018) Heliyon, https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2018.e01084</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390855190129344128
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2021.0_123
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ