2019年台風第15号・第19号の影響による地下水位変動

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  • Low atmospheric pressure induced groundwater level change : Impact of the 2019 Typhoon 15 FAXAI and 19 HAGIBIS in Chiba prefecture, Japan

抄録

<p>千葉県では2019年9月から10月にかけて,台風第15号,第19号および第21号に伴う大雨により大きな被害を受けた.特に台風第15号は強い勢力のまま本県を直撃し,暴風による倒木や家屋の損壊,大規模停電を生じるなど被害は甚大となり,「令和元年房総半島台風」と命名された.また,台風第19号通過の際には市原市で竜巻が発生し,死者を伴う被害が出た.これら低気圧の影響を受け,千葉県内の観測井で観測された顕著な地下水位変動について報告する.</p><p>2019年台風第15号・第19号の概況と地下水位観測体制:台風第15号は,9月5日に南鳥島近海で発生し,9月9日未明に三浦半島を通過,午前5時前に暴風域を伴い千葉市付近に上陸した後,午前8時頃には茨城県沖へと通過した.上陸時の気圧は960hPa,千葉市の最大瞬間風速は57.5m/sを記録し観測史上1位となった1) .台風第19号は,10月6日南鳥島近海で発生し,10月12日19時前に伊豆半島に上陸した後,22時過ぎに野田市付近を965hPaで通過した2).通過に先立つ08時過ぎに市原市で竜巻が発生し,死者1名,住家の全壊12棟,半壊23棟の被害を生じた3).なお,千葉県では154井の地下水位・地盤沈下観測井を設置し,地下水位を連続観測している他,環境研究センター直営の約30井においても地下水位を連続観測している4).また,地下水圧センサーの大気圧補正を目的とした気圧計を9地点に設置している.</p><p>気圧低下と地下水位変動:台風第15号は上陸時の中心気圧が960hPa,暴風半径が南東90km北西70kmとされる1)一方,台風第19号は通過時の中心気圧が965hPa,暴風半径が南東330km北西260kmとされ2) ,中心気圧は同規模であったが台風の「大きさ」は1ケタ異なる規模であった.富里立沢観測所(富里市立沢)は,台風第15号の最接近時に中心から約10km,台風第19号で約40kmの距離に位置した.本観測所の気圧計では,台風第15・19号最接近時に,それぞれ973 hPaおよび975hPaを記録した.また,1000hPaから最低気圧までの低下時間を見ると,台風第15号は3時間たらず,台風第19号では9時間以上を要している.なお本観測所に設置されたWTM-1号井(井戸深度:20.2m,スクリーン深度:16〜19m)では,いずれの台風でも30cmを超える地下水位の上昇が観測された.この30cm地下水位上昇に要した時間は,台風第15号で約4時間,台風第19号で約17時間となっている.この気圧と地下水位変動の相関から,10hPaの変化で8〜10cm地下水位が変動することが推定される.</p><p>竜巻と地下水位変動:台風第19号通過に先立つ10月12日08時08分頃,台風からの暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で活発な積乱雲が発生し,その通過中に市原市北部で竜巻と推定される突風が発生した3).竜巻被害地域は,北西-南東方向に約1800m・幅約700mの帯状に認められた.この周囲には,約10本の地下水位観測井が設置されており,そのいくつかにおいて竜巻の影響と考えられる地下水位変動が確認された.このうち竜巻被害地域の南東約3800mに位置するIc-4号井,同約1300mに位置するIc-3号井,被害地域北東側約800mに位置するW-6号井,被害地域北西約2200mに位置するW-5号井では,竜巻発生時刻に前後して1〜2cm程度のスパイク状の地下水位上昇が観測された.これら観測井の位置と地下水位上昇時間の差から,竜巻は南東方向から北西方向に向かって時速60km/hを超える速度で移動したものと推定される.</p><p>引用文献 </p><p>1) 気象庁,2020,災害時自然現象報告書(令和元年房総半島台風等),2.</p><p>2) 気象庁,2019,災害をもたらした気象事例,台風第19号による大雨,暴風等(速報). </p><p>3) 銚子地方気象台,2020,現地災害調査報告 令和元年10月12日に千葉県市原市で発生した突風について. </p><p>4) 千葉県環境研究センター地質環境研究室,2020,千葉県の地盤沈下(観測井資料編),51.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390855190137439232
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2021.0_150
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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