側頭骨組織病理標本によるヒト胎生期の内耳発生と18トリソミー症例の内耳形態の特徴

DOI
  • 木村 優介
    国立病院機構東京医療センター・感覚器センター 日本大学医学部 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野
  • 加我 君孝
    国立病院機構東京医療センター・感覚器センター

書誌事項

タイトル別名
  • Organogenesis of inner ear and anomalies of inner ear in trisomy 18 syndrome studied by temporal bone histopathology

抄録

<p>目的:18トリソミーの1症例の内耳の形態異常(malformation)の発生機序を胎生期の内耳発生(organogenesis)から考察する.</p><p>対象:胎生期のヒト側頭骨組織病理標本と在胎35週に死産となった18トリソミー症候群の1例の病理標本を調べた.</p><p>結果:蝸牛は2回転と短く,頂回転は低形成であり,蝸牛軸は短く,蝸牛神経管開口部の狭窄を認めた.蝸牛中回転までは蝸牛管・前庭階・鼓室階の3層の膜性の構造が確認でき,基底板上にはコルチ器の形成を認め,外・内有毛細胞,血管条の形態には異常を認めなかった.球形嚢は低形成であった.卵形嚢は平衡砂膜と感覚上皮を認め,卵形嚢周囲の迷路骨包の骨化も認めた.前半規管は正常な管腔構造を認めた.外側半規管は太く短く,低形成であり,外側半規管膨大部稜のクプラの形成は認められず,外側膨大部神経の走行異常を認めた.後半規管は管腔構造が小さく低形成であった.</p><p>結論:蝸牛形態は,恐らく膜迷路の蝸牛管の発生が胎生6–8週に停止したため,2回転の低形成な時点で迷路骨包の化骨が始まり,膜迷路全体と迷路骨包の低形成の誘因となったと推定した.コルチ器の分化と骨迷路の骨化は進んだと考えられる.耳石器・半規管の分化をみても胎生20週相当まで発生は進んでいる.これまでの18トリソミーの報告例と比較して,蝸牛の低形成と半規管の低形成など比較的報告が多い形態異常を本症例でも認めた.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390855511124879232
  • DOI
    10.11289/otoljpn.31.390
  • ISSN
    18841457
    09172025
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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