中国製大型無色 HPHT 合成ダイヤモンド結晶の観察
書誌事項
- タイトル別名
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- Observations on large HPHT-grown synthetic diamond crystals made in China
説明
<p>中国の鄭州は、工業用合成ダイヤモンドの世界的な生産地で、世界の需要のおよそ 95%を担っている。 ZhongNan Diamond Co., Ltd. 、Huanghe Whirl Wind Co., Ltd. 、 Zhengzhou Sino Crystal Co., Ltd. は、「3 大巨頭」と称され他を圧倒しているが、他にも多くの製造会社が林立している。 2014 年末頃からこれらの企業により宝飾用メレサイズの無色合成ダイヤモンドの生産が開始され、その圧倒的な生産量により、瞬く間に世界の宝飾市場を席巻した。2018 年以降、 0.2ct~0.5ct のカット石が中心に生産されているが、最近では 1ct~2ct サイズのものも作られている。 本報告では、中国のある企業によって製造された 3~8ct の大型無色結晶原石の宝石学的特徴を紹介する。今回検査に供した試料の内訳は様々な品質の 3-4ct 原石29 個、 5-6ct 原石 3 個、 7-8ct 原石 1 個の総計 33個である。</p><p>結晶原石すべてに種結晶の痕跡が認められた。種面の方位はすべてにおいて{100}であった。原石の形状は{100}と {111}が大きく発達しており、 {110}、 {113}、 {115}も認められた。各結晶面の大きさには個体差があるが、概して{111}> {100}のものが多かった。種面以外の結晶面には多数の線模様が認められた。これらは異なる指数の結晶面に連続しており、成長時に形成したものではなく、冷却時に溶媒金属との反応で形成されたと考えられる 。この線模様は HPHT 合成に特有のもので、カット・研磨後に残されていれば鑑別特徴になると思われる。すべての結晶内部には金属 inc.が見られた。 これらは種結晶近辺と分域境界に集中する傾向にあった。蛍光X線分析および LA-ICP-MS 分析において結晶表面に達した金属inc.からは Fe、 Co と微量の Ti および Cu が検出された。短波紫外線(SWUV)下ではやや緑がかった青白色の明瞭な燐光がすべての試料に観察された。燐光には強弱があるが、数 10 秒から長いものでは 1 分以上認められた。 FTIR分析を行った 13 個はすべて窒素に関連したピークを示さないⅡ型で、 一部には非補償のホウ素のピークが見られた。ホウ素のピークが見られるものは概して SWUV で燐光が強かった。3 個の大型結晶について SYNTHdetect にかけたところすべて Refer となった。 DiamondViewでは各成長分域によって異なる強さの蛍光像と燐光が観察された。 以上の諸特徴から、これらの結晶原石がカット・研磨された後も天然ダイヤモンドとは確実に識別が可能と考えられる。</p>
収録刊行物
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- 宝石学会(日本)講演会要旨
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宝石学会(日本)講演会要旨 44 (0), 11-11, 2022
宝石学会(日本)