スポーツ吹矢は中高年女性の尿失禁予防に効果的か?

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抄録

目的: 閉経後の女性に多発する腹圧性尿失禁は、骨盤底筋群の機能低下に起因するとされ ている。骨盤底筋機能の弱体者は横隔膜との連動した腹式呼吸の遂行が難しく、胸式呼吸 に依存しやすい傾向が認められている。「スポーツウエルネス吹矢」競技は腹式呼吸の健康 への恩恵を感じていた創始者が日本古来の「吹き矢」を吹くことで腹式呼吸を実践できる ことに閃いて創られた。この競技の実践が、骨盤底筋群の機能改善をもたらす可能性が示 唆され始めたが、未だこれらの関係を検証した報告はみられない。そこで本研究は、スポ ーツ吹矢の経験の有無に着目し、スポーツウエルネス吹矢における腹式呼吸の実践が、特 に中高年女性の骨盤底筋群への機能に及ぼす効果を検討し、スポーツ吹矢が尿失禁の予防 に有効か否かを議論することを目的とした。 方法:(対象者)スポーツウエルネス吹矢の愛好者(競技歴:1~6 年:EX 群)女性12 名(年 齢:69.6±8.7 歳、身長:154±5.0cm、体重:53.6±6.5kg)、一般女性(CON 群)23 名(年 齢:56.0±10.3 歳、身長:156.1±5.3cm、体重:50.0±5.2kg) (測定項目・測定方法)測定項目は吹矢の速度(構えた地点から的までの距離6m)、努力性 肺活量(FVC)、股関節内転筋力、質問紙による尿失禁の有無の調査を行った。吹矢速度、 FVC、股関節内転筋力の項目はEX 群とCON 群間で対応のないt 検定を行い、有意水準は5% とした。また、超音波画像診断装置による骨盤底筋群の収縮確認も行った。 結果:吹矢速度の平均値±標準偏差はEX 群:102.58±12.01km/h、CON 群:97.82±10.67km/h であった。両群に有意な差は認められなかった。FVC の平均値±標準偏差はEX 群:1.83± 0.38ℓ、CON 群:2.28±0.58ℓで、両群に有意な差は認められなかった。股関節内転筋力の 平均値±標準偏差はEX 群:15.99±4.37kg、CON 群:13.54±3.88kg で、両群に有意な差は 認められなかった。質問紙による尿失禁の有無の回答より尿失禁の有症者を比較したとこ ろ、EX 群は1 名(発症率8%)、CON 群は9 名(発症率39%)の有症者の回答があり、吹矢 愛好者に尿失禁の有症者が顕著に少ない結果であった。 考察:骨盤底筋群の機能と吹矢の呼吸法に関連性が高いと考えられる吹矢速度、努力性肺 活量、股関節内転筋力の項目に関して、EX 群とCON 群間に有意な差は認められなかった。 しかし、EX 群の尿失禁の有症者は1 名であり、経験年数の浅い(1 年未満)者であったこ とから、吹矢の愛好者には尿失禁の発症が少ないものと示唆された。本研究では吹矢愛好 者の測定数が少ないことや愛好者の吹矢実施頻度が月に2 回であったことから、さらに検 証する必要がある。 現場への提言:本研究の結果、スポーツウエルネス吹矢の愛好者に尿失禁罹患者が少ない ことが明らかとなったが、吹矢における呼吸運動が骨盤底筋群の機能の維持や向上を示す 結果は得られず、尿失禁予防に効果的であるか否かを裏付ける結果は得られなかった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390855656045356928
  • DOI
    10.32171/cpjssct.2020.0_p05
  • ISSN
    24343323
    24337773
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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